スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
世界総スペイン化の陰で本国に異変?
リーガからの人材流出が止まらない。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byAFLO
posted2013/08/06 10:30
6月のコンフェデ杯では、ウルグアイ戦で決勝ゴールを決めるなど活躍したソルダード。
運営陣から選手までスペイン化を推し進めるマンC。
こうした流れを象徴するクラブの1つに、元バルセロナ副会長のフェラン・ソリアーノがゼネラルマネージャー、同じく元バルセロナのチキ・ベギリスタインがスポーツディレクターを務めるマンチェスター・シティがある。
リーガを熟知するマヌエル・ペジェグリーニを新監督に招へいしたシティは、既にダビド・シルバやハビ・ガルシアらを擁するチームのスペイン化をさらに進めるべく、今夏新たにネグレドとヘスス・ナバスを獲得した。
選手、監督としてリーガで活躍したスウォンジーのミカエル・ラウドルップもチームのスペイン化を進める1人だ。彼は昨季大当たりしたミチュらに続き、今夏もエスパニョールからジョルディ・アマト、ベティスからホセ・アルベルト・カニャス、アレハンドロ・ポスエロらを補強している。
昨季ウィガンでFAカップ初優勝を果たしたロベルト・マルティネスも、新天地エバートンにてさっそくバルセロナの新星デウロフェウ、昨季自身がアトレティコ・マドリーからウィガンに連れてきたジョエル・ロブレスらを加えている。
プレミアに続き、セリエ、ブンデスにもスペインの風が。
スペイン化の流れが見られるのはプレミアリーグだけではない。今夏ナポリの新監督に就任したベニテスは、リバプール時代と同じくレイナ、アルビオル、ホセ・マリア・カジェホンらスペイン人を次々と獲得。彼らにイグアインを加えた陣容は「レアル・ナポリ」と呼ばれはじめている。
他にもドイツではジョゼップ・グアルディオラ、ベルギーではビクトル・フェルナンデスやフアン・カルロス・ガリード、ウクライナではフアンデ・ラモス、ギリシャではミチェル、UAEではキケ・サンチェス・フローレスといったリーガでの指導経験が豊富な監督達が、それぞれのチームに“サボル・エスパニョール(スペインテイスト)”を加えている。
経済面に加え、こうして国外にスペイン人選手を受け入れやすい環境を持つクラブが増えたこと。スペイン人選手にとって新たなる大航海時代がはじまった背景には、このような変化があったのである。