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夜中の救急病院、ブラジルのトラウマ、
そしてフットボールしかない小さな国。
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近藤篤Atsushi Kondo
photograph byAtsushi Kondo
posted2013/06/29 08:01
![夜中の救急病院、ブラジルのトラウマ、そしてフットボールしかない小さな国。 <Number Web> photograph by Atsushi Kondo](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/9/9/700/img_99e3ae7e35cf10f791dcfda0f547db6f288561.jpg)
フッキことジオバンニ・ヴィエイラ・デ・ソーザ選手は、子供時代に読みふけったアメリカン・コミックの「超人ハルク」から母親につけられたあだ名を選手名として登録している。
ブラジルは冴えなかったが、負ける気もしなかった。
ベルナルジ、エルナニス、フェリポンと積極的に選手を投入したが、ウルグアイの強固なディフェンスはさほど綻びを見せなかった。75分、80分、時間はクールに経過してゆき、マラカナッソの足音が遠くから聞こえてくる。
足音を消したのは、パウリーニョだった。86分、左CKからネイマールの上げたボールをファーポストで合わせ、ブラジル待望の2点目を叩き込む。スタジアムは絶叫し、6万人の観衆が喉から吐き出す雄叫びで、ピッチの上に少しガスがかかる。ロスタイムは3分、ウルグアイは最後のCKにGKのムスレラまで上げて勝負に出たが、決められず、ロスタイムの3分が終了した。
結果から言えば、この日のブラジルはマラカナッソの三歩手前ぐらいまで追い込まれた感じだっただろうか。
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ブラジル、準決勝進出。相変わらず冴えないブラジルではあったが、ピッチサイドにいて、ブラジルが負けるかもしれない、そんな感じはしなかった。この日のウルグアイには彼らの最大の武器であるガーラがほんの少し足りなかったかもしれない。むしろ最後に勝利への執念、ど根性を見せたのは、ブラジル代表だった。
「ウルグアイにはね、フットボールしかない」
それにしても、ウルグアイ。
僕はこの国の代表チームを見るたび、いつも同じことについて考える。なぜ、人口300万人の国がこれほどまでのサッカーを見せられるんだろう? だって、静岡県だけでブラジルを苦しめてるんだぞ。
「ウルグアイにはね、フットボールしかない。そして、フットボールの世界でなら、我々にも何かを成し遂げられる。今から80年も前にW杯を初めて開催してから、ウルグアイ人はずっとそう信じてやってきた。もしかすると、この国のサッカー選手は、背負っているものが他の国の選手とはちょっと違うのかもしれないね」
(アレハンドロ・フィゲレード/ウルグアイのTV局「カナル12」)
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