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ダルビッシュとの“お見合い”が破談。
大野に求められる理想の女房役とは?
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2010/09/06 12:20
スポーツ紙風に言えば、またしても「お見合い」が破談に終わった。
8月28日、北海道日本ハム対オリックスで、ダルビッシュ有は前週に引き続き2年目の捕手、大野奨太とバッテリーを組んだ。今季3度目のことだった。
だが、ダルビッシュは2失点で完投しながらも、打線の援護がなく1-2で7敗目。
結局、次戦の9月4日の千葉ロッテ戦は、従来通り、鶴岡慎也とのコンビに戻し、勝ち星はつかなかったものの、8回を無失点に抑えた。このぶんだと今後しばらくは、また鶴岡とのコンビでいきそうな気配だ。
ダルビッシュと大野が初めて組んだのは7月17日の楽天戦だった。この日も7回3失点でダルビッシュは負け投手になっている。2度目となった8月20日の西武戦は4失点を喫し降板。黒星こそつかなかったものの、スッキリとしないものが残った。
監督の梨田昌孝の、ゆくゆくは大野を正捕手にしたいという意図ははっきりしている。だが、最後の扉が、なかなかに重いのだ。
3度目の「お見合い」となったオリックス戦も、ダルビッシュは大野のサインに何度も首を振るなど、明らかに苛立っていた。だが、そうしたシーンは慣れているはずの鶴岡のときでさえ、いまだによく見られる。
ただ、捕手サイドのその受け止め方によって、わずかながらダルビッシュのリズムに狂いが生じているのかもしれない。
「夫をたてる」鶴岡と「カカア天下」の大野。
鶴岡と大野の「女房役」としての違いを投手コーチの厚澤和幸がこんな風に評していたことがある。
「大野は言ってみれば、カカア天下。鶴岡は、三歩でも四歩でも下がってついていくというタイプ」
確かに、この言葉に尽きる。
鶴岡は樟南高校、三菱重工横浜を経て、入団テストをパスしてドラフト8巡目で'03年にプロ入り。'06年の終盤からダルビッシュとの相性のよさをかわれ、少しずつ試合に出られるようになった苦労人だ。しかも、他投手とバッテリーを組むこともあるが、今なお「ダルビッシュ専属捕手」という印象が強く、言ってみれば、ダルビッシュは自分を引き立ててくれた大恩人でもある。
それに対し大野は、大学球界最強と言っていいだろう、東都リーグの名門、東洋大出身で、3、4年時には戦後初となるリーグ4連覇を達成。主将も務めた。学生時代の実績は十分。'09年にドラフト1位で入団し、即戦力として期待されていたほどの捕手だ。
それぞれの経歴からも、2人のメンタリティの差は十分に理解できる。
ある意味、鶴岡は「夫をたてる」タイプの捕手でなければ生き残れなかっただろうし、逆に、大野はこれまで「カカア天下」でなければチームを引っ張ることはできなかったに違いない。それは2人の話し方、話す内容にもはっきりと表れている。