スポーツで学ぶMBA講座BACK NUMBER
<公開セミナー特別レポート3>
ファンがファンを呼ぶ、また行きたい。
千葉ロッテが目指す顧客満足とは?
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byAsami Enomoto
posted2013/06/19 10:30
原田氏のプレゼンテーション後は、グロービス経営大学院准教授の葛山智子氏との対談、参加者との質疑応答へと移り、会場では活発な議論が交わされた。
そんな厳しい環境下で、球団売上げを2004年と比べて約3倍に
成長させたのが、千葉ロッテマリーンズ。12球団で下から2番目にファン数が少ないと言われる千葉ロッテは、どのようにして経営改革を成し遂げたのか。
連載「スポーツで学ぶMBA講座」の番外編として5月27日に開催された、Number Web×グロービス特別公開セミナー「『千葉ロッテマリーンズの挑戦』~顧客満足度を高めるマーケティング戦略~」。ゲストの千葉ロッテマリーンズ事業本部企画部・部長代理の原田卓也氏によるチーム経営状態の改善への取り組みを2回にわたってお届けしてきた。このプレゼンテーションを受けて、後半は「スポーツで学ぶMBA講座」の著者である葛山智子氏と原田氏の対談、そして参加者との質疑応答へと展開していった。
葛山 今回のお話をうかがって強い印象を受けたのは、ファンというものがあってこそという考え方です。私が見に行った際には5、6人の大学生くらいの女の子たちが観戦に来ているなど、川崎時代に比べると球場の雰囲気の良さ、明るさを感じます。
原田 僕は'05年入社なので古株の社員に聞くと、川崎時代は人がいない中で酔っ払ったオジさんがヤジを飛ばすという……ある意味、昔のパ・リーグの特権と言うか違うエンターテイメントだったわけです(苦笑)。ただ、新フランチャイズに移ったことでチーム自体にも変化の必要があったのです。その明るい球場の雰囲気やお客さんの数の増加は有藤(通世)さんをはじめとしたOBからも凄くうれしいと言われています。
どんなに強いチームでも10回に4回は負ける。
葛山 昔のイメージから変わった中で、球場に通っているファン層はどんなタイプが多いのでしょう?
原田 20~30代のカップル、もしくは夫婦が子供と一緒に来ているのが多いですね。ロッテの応援は他にはないスタイルで、若いファンにとっては馴染みやすいものでした。友達に対して「面白い応援だから一緒に行こうよ」と言いやすくなりますよね。また、4、5歳の子供がその応援を真似てピョンピョンはねている姿をよく見かけます。そのような流れを見ると良いスパイラルに入っているのだと思います。
葛山 確かに、キッズを意識したイベントも多くありますね。
原田 土日のデーゲームは子供たちが来やすいということで、必ず試合後にグラウンドに出てもらうイベントをやります。そこでベースランニングやキャッチボールなど、親子で楽しんでもらいます。このグラウンドを使った企画は、球団にとってもコストがかからないのです。
上記のキッズベースランニングだけではなく、他球団とは一味違うファン層を作り上げた中で、様々なイベント企画を仕掛けている。試合以外の所に力点をいれるのは、球団経営の考え方に変化があるからだ。
その変化のポイントについて葛山氏は、「プロ野球『地域密着』型経営の秘訣。顧客満足に必要な前提条件とは?」で書いたような顧客満足に必要なターゲットとコンセプトの決定方法にあるのではないかと注目する。
葛山 (千葉ロッテは)来場していただいたお客様に対して、球場でどのような貴重な体験をしてもらおうか? という点を重要視して、スポーツビジネスにおけるサービスのコンセプトを変えてきたのかな、と感じました。やはりその変化は従業員の立場として意識しているのでしょうか。
原田 もちろんチームの勝敗は最重要なのですけれど、野球ではどんな強いチームでも10回試合したら4回は負けてしまうものです。お客様が運悪く負け試合に当たってしまったとしても、例えば美味しいものが食べられた、ファンサービスが面白い、スタッフ対応が素晴らしかったなどチームの要素以外の部分で私たちが頑張って、気持ち良く帰れて「また来よう」という気持ちにさせることが重要なんですね。
葛山 ちなみにそのファンサービスなのですが、これは“効く!”といったものはあったりするんでしょうか?