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<公開セミナー特別レポート1>
プロ野球を取り巻く厳しい経営環境。
現実を直視した千葉ロッテの改革。 

text by

茂野聡士

茂野聡士Satoshi Shigeno

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photograph byAsami Enomoto

posted2013/06/17 10:30

<公開セミナー特別レポート1>プロ野球を取り巻く厳しい経営環境。現実を直視した千葉ロッテの改革。<Number Web> photograph by Asami Enomoto

野球界を揺るがせた「1リーグ構想」直後に千葉ロッテの事業部に加わった原田卓也氏。前職のIT業界で培った論理的思考で球団の経営改革に邁進した。

<レポート1>   <レポート2>   <レポート3>

プロ野球ファンは、この10年間で16%、約1000万人が減少したという。
そんな厳しい環境下で、球団売上げを2004年と比べて約3倍に
成長させたのが、千葉ロッテマリーンズ。12球団で下から2番目にファン数が少ないと言われる千葉ロッテは、どのようにして経営改革を成し遂げたのか。

連載「スポーツで学ぶMBA講座」の番外編として5月27日に開催された、Number Web×グロービス特別公開セミナー「『千葉ロッテマリーンズの挑戦』~顧客満足度を高めるマーケティング戦略~」では、千葉ロッテの
経営改革の当事者をゲストに招き、講演とグロービス大学院の葛山智子氏との対談を交えてビジネスとしての球団経営に迫った。
Number Webでは、この特別セミナーのエッセンスを3回に分けてお届けする。

「球団再編騒動の頃まで、球団は年間数十億円の赤字を出していました」

 と千葉ロッテマリーンズ事業本部企画部・部長代理の原田卓也氏は語った。

 2004年6月に浮上した近鉄バファローズの経営悪化に伴うオリックス・ブルーウェーブとの合併話に端を発して浮上した「球団削減、1リーグ化構想」にプロ野球界は揺れに揺れ、球界初の選手会による試合ボイコットにも発展した。実はロッテにも、ダイエーとの合併、福岡移転案が浮上していたのである。

 原田氏が入社したのは、2005年3月。まさに、こうした危機の最中のことだった。

プロ野球のビジネスモデルが変わった。

 そもそもプロ野球は、どのようなビジネスモデルとして運営されてきたのだろうか。

「DeNAの横浜ベイスターズ買収に、巨人が置かれた現状と、球団と球場の関係を掛け合わせると、スポーツビジネスの仕組みがわかります」

 と原田氏は語る。いったい、どういうことだろうか。

 巨人のファンは2001年の2,272万人が、10年後の2011年には1,323万人と約1000万人、40%以上も減少している(2011年PLM調査)。それを追うように横浜ファンも242万人から171万人と3割減となっている(同)。こうした中で起きたのが、2011年のTBSによる横浜ベイスターズの売却だった。

「2012年にDeNAが新規参入を果たしましたが、横浜ベイスターズの売却の際に当時の親会社であるTBSが、広告不況ということもあって赤字を計上していました。チームも10年間で8回最下位、そして巨人戦の視聴率低迷も大きかったのです」

 以前は当たり前だった“夜にテレビをつければ、地上波でプロ野球中継を見られる”状況が、急速に変化していった。

「昔は放映権料が多額でしたが、今では地上波で野球中継をほとんどやらなくなってきた。そのため巨人を中心とした分配モデルが崩れてきたということです」と原田氏。

【次ページ】 パ・リーグのファンは55%増。

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千葉ロッテマリーンズ
原田卓也

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