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<公開セミナー特別レポート3>
ファンがファンを呼ぶ、また行きたい。
千葉ロッテが目指す顧客満足とは? 

text by

茂野聡士

茂野聡士Satoshi Shigeno

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photograph byAsami Enomoto

posted2013/06/19 10:30

<公開セミナー特別レポート3>ファンがファンを呼ぶ、また行きたい。千葉ロッテが目指す顧客満足とは?<Number Web> photograph by Asami Enomoto

原田氏のプレゼンテーション後は、グロービス経営大学院准教授の葛山智子氏との対談、参加者との質疑応答へと移り、会場では活発な議論が交わされた。

受け入れられるファンサービスとは何か?

原田   ファンに受け入れられるものって“スポンサー臭”がしないものなんですよね。先ほどのプロポーズナイターがそうなんですが、これから結婚する2人がすごく楽しそうで、観衆も共感する。そしてプロポーズの際には結婚指輪が必要なので、(ブライダルリング専門店の)アイプリモさんがスポンサーでもまったく唐突感がないわけです。球団やスポンサーからの一方通行ではなく、集まる仲間の中でどんな波及効果が生まれるかが大事かと思います。

 これらのイベントでファンを楽しませながら、購買行動につなげていく。その重要なファクターになるのがCRMというわけだが、葛山氏は「熱心なファンは新しいファンを育てる!? 顧客同士が満足度を高めあう好循環。」で触れた、「顧客にいかにロイヤルカスタマーへの階段を上ってもらうか」という視点から質問を投げかけた。

葛山   CRMを導入して、ロッテはプラチナ、ゴールド会員と自分たちで上り詰めるロイヤリティのシステムがあります。「2:8の法則(パレートの法則)」というものがあるのですが、千葉ロッテの会員の中でも上位20%の方が売り上げの80%を占めているのでしょうか?

原田   それはデータではっきりと出ています。常に来てくれるプラチナ、ゴールド会員はチケットを複数枚買って友人を球場に連れてきてくれて、自らアフィリエイト役となってくれています。私は、口コミは一番強いマーケティングツールと考えているので、このお客様の存在は大きなものです。

マリナーズまで調査に行ったCRMの導入。

 千葉ロッテの経営を支えるCRM。しかし実際にCRMのシステムを導入した企業のビジネスマンからは、「リピート率を増やして売り上げを高めたいのだが、導入したツールを生かし切れていない」という悩みの声も聞かれた。それに対して原田氏はデータの設定の重要性を指摘して、話は発展していく。

原田   例えば野球で言うと購入データだけではなく、当日の先発投手や相手、天気などのパラメータをインプットしています。そのデータを“どう分析するか”という部分が重要なのではないでしょうか。

葛山   その分析において、参考にしたものはあったのですか?

原田   実は'05年にシアトル・マリナーズがCRMを使用しているという情報があったので、実際に聞きに行きました。しかしマリナーズの場合はファンクラブ組織がなく、シーズンチケット購入者を対象としたもので、ロッテの場合と少し違ったわけです。最終的に参考にしたのは、世界中でCRMが有名なのは航空会社なので、全日空さんに話を聞いたりしていました。先行事例がなかったので、非常に苦労しましたね。

葛山   そのCRMの膨大なデータベースをどのように生かしているのでしょうか?

原田   プロスポーツのCRMの場合、シーズン中の約6カ月で売り上げを回収しなければならないので、活躍する選手やチームの成績は変化します。いかに効率的にアプローチをするかが重要です。その意味ではピンポイントでマーケティングする必要性を感じますね。

【次ページ】 サッカーとプロ野球のビジネス的な違いとは?

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