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<公開セミナー特別レポート3>
ファンがファンを呼ぶ、また行きたい。
千葉ロッテが目指す顧客満足とは? 

text by

茂野聡士

茂野聡士Satoshi Shigeno

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photograph byAsami Enomoto

posted2013/06/19 10:30

<公開セミナー特別レポート3>ファンがファンを呼ぶ、また行きたい。千葉ロッテが目指す顧客満足とは?<Number Web> photograph by Asami Enomoto

原田氏のプレゼンテーション後は、グロービス経営大学院准教授の葛山智子氏との対談、参加者との質疑応答へと移り、会場では活発な議論が交わされた。

サッカーとプロ野球のビジネス的な違いとは?

 2人の対談に続いて行なわれた、参加者からの質疑応答も熱を帯びた。

 まず、人気が下落気味と言われる野球に対して、何かと比較されるのがサッカーである。

「プロ野球はJリーグのようにもっとチームが増えていく方がいいのか。それとも少ないほうがいいのか」という質問に対する原田氏の回答は明確だ。

原田   実はJリーグとプロ野球だと、根本的にビジネスモデルが違います。Jリーグはひと月に行うホームゲームは約2、3試合です。それに対してプロ野球は主催試合を約15、16試合こなさなければいけません。またJリーグは基本的にフランチャイズの概念が都市ごとなので、規模が小さくてもビジネスとして成立できる要素は持っているのですが、プロ野球の場合は都道府県、もしくは東北や九州地方など大きな捉え方になります。もしプロ野球が球団を増やすと球団ごとのビジネスの規模が小さくなるため、単純な比較はできないのです。

 年間50試合ほど足を運ぶという熱烈なファンからは、「'08年をピークに、本拠地の観客動員が下がっています。違うアプローチも必要なのではないでしょうか?」という提言が出た。原田氏はその現状を認めながらも、大事なのは“対応力”だと力説する。

原田   爆発的に観客動員を増やすためには、フランチャイズの移転、新球場の設立、そして優勝の3つしかありませんし、大抵はプラスマイナス5%の中で推移していきます。その数値の中でいかにとどめながらビジネスをしていくかが、継続的な球団経営に繋がるのだと考えています。急に観客数が増加する“魔法”はないので、ファンの数を少しでも増やしていく、中長期的な観点で経営するのがベターなのかなと思います。

日本のスポーツビジネスは“Dream job”になれるか?

 プロスポーツビジネスやファンサービスの現状については、こんな質問が飛んだ。

「アメリカではスポーツ業界で働くことを“Dream job”と呼びますが、日本の場合だと大学生のアルバイト等を使わざるを得ないことが多く、サービス面で満足ができない対応が多いかと思います。その雇用に対して今後どうしていくべきなのでしょうか?」

 原田氏は米国との比較は難しいと前置きしながら、将来への展望を語る。

原田   米国の場合、大学スポーツが日本のプロ野球くらいのボリュームを持つビジネスとなっています。そのため、大学のスポーツビジネスを経験してからプロスポーツを目指すキャリアステップのプランが明確にあるのです。一方で日本の場合はプロ野球、Jリーグともになかなか人を雇えないという現状です。「その状況でもいいから働きたい」という人たちの雇用をいかに創出していくかが大事です。あとはNPB全体で考えるのならば、そのようなやる気のある人材を共通化していくことができるか、というのがポイントなのかなと思います。

 プロ野球球団の経営は難しいながらも、原田さんをはじめとした球団職員にはチームを支えている充実感がある。そこには、一般的なビジネスにも共通するポイントがある。

【次ページ】 ファンからの「ありがとう!」が従業員の満足度に。

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