自転車ツーキニストのTOKYOルート24BACK NUMBER
古川橋発、吉原経由、夢の島まで。
明治通りは「祈りの環状線」だった。
text by
疋田智Satoshi Hikita
photograph bySatoshi Hikita
posted2010/07/18 08:00
今から25年前、東京に出てきたばかりの私にとって「明治通り」というのは謎の通りだった。
渋谷にも新宿にも池袋にも存在し、なおかつ東側の亀戸や三ノ輪など下町方面に行っても出現する。王子とか随分と北の街にもあり、広尾あたりのいわゆる「ハイソな地域」にも走っている。
なぜか「どこの街にでもある」通り。当時の私は、東京には「明治時代にできた大通りは全部『明治通り』と呼ぶ」というような風習でもあるのかしらと思っていた。
もちろん、そんなおかしな風習はない。
「明治通り」またの名を「環状5号線」。
明治通りというのは、いわば東京都心をぐるりとめぐる環状線であって、別名を東京環状5号線という。鉄道でいうなら山手線のようなものだ。
もともと東京23区にはメジャーな環状線が合計8つある。それぞれに名前があり、ナンバーが打たれている。外側から「環八」「環七」。この2本は、その名の通り環状8号線と7号線。その内側の山手通りが環状6号。くだんの明治通りが環状5号。さらに内側に外苑西通り(環4)、外苑東通り(環3)、外堀通り(環2)、内堀通り(環1)と続く。
ところが、これらがすべて環状線としてつながっているかといえば、さにあらず。現状としては、まがりなりにも環状線つまり一応、円になっているのは、環1、環5、環7の3本しかない。あとの「環状線」は、どこかで途切れ途切れになり、結局「西側の南北道路」というに過ぎなかったりする。この「8本の環状線」という大目標。実は、はるか戦後のGHQにまで遡るのだそうだ。
さて、明治通りは、港区の「古川橋」を起点とし、江東区の夢の島(新木場)が終着点。山手線をちょっと北東にずらしたような縦長の円を描いている。
今回はそこを走ってみようと思うのだ。
東京都心を走る人にとって、もしかして「最も身近な大通り」かもしれない。ところが、起点から終点まで走った人は少ない。少なくとも私の周囲の自転車仲間には皆無だった。
最初に、今回の結論。
走るべし。面白いぞ。というのか、私にとっては意外な発見だらけだった。何かというなら、この明治通り、本気で言うが「祈りの環状線」なのである。