自転車ツーキニストのTOKYOルート24BACK NUMBER
古川橋発、吉原経由、夢の島まで。
明治通りは「祈りの環状線」だった。
text by
疋田智Satoshi Hikita
photograph bySatoshi Hikita
posted2010/07/18 08:00
都電荒川線が、道路の真ん中を。
さて、サンシャインを後にして、明治通りを北に上っていくと、周囲の雰囲気は、ちょっと「埼玉っぽく」なってくる。
これは別にネガティブな意味ではなく「新興住宅地っぽい」匂いが漂ってくるという感じだろうか。池袋の猥雑な雰囲気から、ちょっと清潔な感じに変化。そのかわりちょっと薄っぺらな感じもあったりする。
ただし、この辺は自転車で走りやすいなぁ。何だか開放感がある。渋谷、新宿、池袋の三大自転車走行困難地帯を行き過ぎた今だから、特にそう思う。
巣鴨あたりを過ぎると、付かず離れず走ってきた都電荒川線が、いよいよ、道路の中に入ってくる。文字通りの「路面電車」となる。埼玉っぽさの中に「帝都っぽさ」が再び入り込む。
よくよく見ると、昭和っぽい質屋などが建っていたりして、味わい深い。
王子駅前の大交差点を渡ると飛鳥山公園だ。上野公園と並んで、桜の名所として江戸時代から有名な丘の上の公園。その麓に「さくら新道」という看板がある。
流しのギター弾きもいた。「さくら新道」は戦後闇市の名残。
なんだ? と思って入ってみた。こういうところが自転車のいいところで、ちょっと気になれば、すぐに入っていける。入り込んでみると、おお、その正体は、なんだか昭和感いっぱいの「飲み屋横町」だった。飛鳥山公園の緑の土手にへばりつくような形で、数軒の「バー」「小料理屋」が和洋を問わずに軒を並べている。
まだ午前中。当然、営業時間前なので、お化粧っけのない、かなりバーさんに近いオバさんたちが、のんびりと店の準備(?)や掃除をしている。
ちょっとだけ話を聞いてみると、予想通り、戦後のバラックが、この横町の前身だという。
「昔は華やかだったこともあったのよ。ギターの流しの人もいたりしてね。いつの間にか時代に取り残されるような形で、今になっちゃった」
かつての、戦後、闇市、どさくさ、などの残滓が間違いなくここにある。でも「公園近く」という立地が、何だかそういう闇を薄めてくれているように見えるよ。
すぐ近くには、都電荒川線の飛鳥山駅。明治通りは、荒川線と並行ながら、北区、荒川区を横断していくことになる。
よく見ると、荒川線には時折オシャレな車両も走ってるね。「チンチン電車」というより「LRT」、ヨーロッパ型のトラムのイメージだ。
悪くない。本来、路面電車というものは、自転車と並んで非常にエコであり、21世紀的なものでもあるのだ。