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イチローと傷だらけのヤンキース。
~今季の役割は「将棋の銀」~
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芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2013/03/11 10:30
![イチローと傷だらけのヤンキース。~今季の役割は「将棋の銀」~<Number Web> photograph by Getty Images](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/f/f/700/img_fff26fbc77777a1d774a996d674ed2e8254962.jpg)
オフも厳しいトレーニングを積み、万全の体調で移籍2年目の春を過ごすイチロー。
ヤンキースが危ない。
2013年の春季トレーニングに眼を向けている人なら、だれもがそう思うのではないだろうか。
なにしろ怪我人が多すぎる。
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デレク・ジーターが足首。
アレックス・ロドリゲスが大腿部。
C・C・サバシアが肘。
フィル・ヒューズが背中。
カーティス・グランダーソンが前腕部。
さらにはマーク・テシェイラが右手首。
それだけではない。FAの権利を得たヴェテランも、この冬ごっそりと抜けてしまった。ニック・スウィッシャー(→インディアンス)、ラッセル・マーティン(→パイレーツ)、ラウル・イバニェス(→マリナーズ)、エリック・チャベス(→ダイヤモンドバックス)。全員が勝負強い得点源だった。
故障者と転出組による戦力低下は新顔選手では補えない。
というわけで、無傷の主力打者といえば、ロビンソン・カノーとイチローぐらいだ。そこに、去年1年をほとんど棒に振ったブレット・ガードナーが戦線復帰し、ヴェテランの域に差しかかったケヴィン・ユーキリスとトラヴィス・ハフナーが新加入する。はっきりいって、鮮度はあまり高くない。
これで勝てるのだろうか。
補強に成功したブルージェイズや、投手陣が充実しているレイズに伍して、ペナント争いを展開することができるのだろうか。
見た目の戦力低下は、もちろん大きい。
たとえばグランダーソンは、'11年と'12年の2年間で合計84本のホームランを放っている。これは、両リーグ合わせて最多の数字だ。2位のライアン・ブラウンとミゲル・カブレラがともに74本だから、細身の身体に似合わぬそのパンチ力には、舌を巻かざるを得ない。
FAでチームを去った選手たちの穴も大きい。先に挙げた4人を合わせた数字は、80本塁打、245打点。ホームランでしか勝てない、と揶揄された'12年のヤンキースがALCSに進出することができたのは、彼らの破壊力があったからだった。