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敗因は“判定”か“元7番ロナウド”か?
因縁対決に敗れたマンU、CLを去る。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byMan Utd via Getty Images
posted2013/03/06 12:10
マンUは、ギグス(右)とラファエウ(左)という右サイドの2人でC・ロナウドを徹底マークしたが、後半24分、一瞬の隙を突かれ、逆転ゴールを許した。
あらゆる話題の頂点に立っていた、ロナウドの存在。
レアルの現「7番」にとって、マンU戦第2レグは4年ぶりの「帰郷」を意味していた。
レアルの現監督にも忘れ難い過去はある。
モウリーニョが世界的な注目を集めたのは、ポルトを率いてマンU相手にベスト8入りを決め、オールド・トラッフォードのタッチライン沿いで“ビクトリーラン”を披露した、9年前のCLの一夜だったのだ。
だが、マンUが「第2の故郷」と言える、ロナウドが醸し出すセンチメンタルには敵わない。
本人の言葉を借りれば「ガキだった自分を育ててくれた」6年間で、小手先の「トリックの玉手箱」から、本物の「ドル箱スター」へと成長したウィンガーは、マンUのエースであったと同時に、プレミアリーグの看板でもあった。
ロナウドは、古巣との第1レグで完璧なヘディングで同点ゴールを決めても喜びはしなかった。第2レグまでの間には、年俸減額を覚悟でマンU復帰を願っているとの報道も流れた。レアルでは、モウリーニョにファーガソン後任の噂が立ち、マンUでは、ウェイン・ルーニーが崩していた体調を取り戻しつつあった。ロビン・ファンペルシはゴール量産中で、香川真司も直前にハットトリックを決め、ライアン・ギグスに公式戦通算1000試合目の出場が見込まれていても……話題の焦点はロナウドでしかあり得なかった。
しかも、マンUが勝ち上がるためには、ロナウド封じが必須となれば尚更だ。
「浪漫派」マンUには、ホームで守備的戦術をとる選択肢は無かった。
アウェイゴールを奪っていることから、ホームでは0対0でもベスト8進出となるはずだったマンU。サンティアゴ・ベルナベウのピッチで、ロナウドに影のようにつきまとったフィル・ジョーンズは、足首の怪我で第2レグ出場が絶望的だった。この試合では、ファーガソンにしては異例のマンマークで、敢えてレアルにボールを持たせるアプローチも目を引いた。攻撃サッカーの看板を掲げる「浪漫派」のホームゲームで、第1レグでの守備を意識した戦術が繰り返されるはずもなかった。
レアルのカウンターの威力は、第2レグ前週にバルセロナに連勝したスペインでのカップ戦とリーグ戦で、今更ながらに確認されたばかり。中でも最大の脅威であるロナウドに走られて失点という展開は、最も現実的に思われた。