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巨人とWBCのピンチを救うヒーローへ!
中継ぎエース・山口鉄也のメンタル術。 

text by

田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byHideki Sugiyama

posted2013/01/24 10:31

巨人とWBCのピンチを救うヒーローへ!中継ぎエース・山口鉄也のメンタル術。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

2012年4月1日のヤクルト戦。7回表1死満塁の場面で、巨人移籍後初の登板だった杉内俊哉から交代した山口(写真右)。見事にピンチをしのぎ、守護神・西村健太朗へとつなぎ、杉内に嬉しい初勝利をもたらした。

緊張する山口を支える、先発投手への強烈な想い。

 常勝軍団である巨人で投げ続けることによって、緊張しやすいタイプである自分と真摯に向き合えるようになった――。

 もちろん、大事な要因ではあるだろう。だが、それ以上に、試合の度に緊張する山口の支えとなっている太い根っこが存在する。

 中継ぎとしての地位を固めつつあった2010年、山口は先発としてシーズンを迎えた。しかし、先発初登板となった4月3日の広島戦で4回途中4失点。ノックアウトされてしまう。ゲーム終盤に味方打線が奮起しチームは勝利したものの後味は悪かった。

 当時こそ、「辛抱強く投げていけば味方が点を取ってくれるので、気持ちに余裕を持って投げられる」と先発の心情を自分なりに理解はしていた。しかし、シーズン中に再び中継ぎに戻ると、その想いは次第に変化してきたと、後に山口は語っている。

「僕の場合、最初の試合に負けてから次の登板までの1週間、嫌な気持ちを引きずってしまった自分がいて。そこで、先発がどれだけ大変な思いをして試合に臨んでいるのかも分かりました。中継ぎに戻って、救援に失敗してもチームで責める人はいないかもしれないけど、僕は『申し訳ない』と、それまで以上に思うようになって。だから、今でもシーズンの目標は、記録より『先発の勝ちを1回も消さないこと』だけなんです」

常に実戦を想定したブルペンでの調整方法。

 その想いは、次第にブルペンでの準備にも変化をもたらすこととなる。

 7、8回に登板することが多い山口は、5回が終了してから肩を作り出す。そして、ベンチからブルペンに登板指令が下ると20球程度、力を入れてボールを投げ込む。

 ここまでは誰でもやっているようなルーティンだ。そこから彼は独自の調整を施す。

 ブルペン捕手に右、左と交互に打席に立ってもらい、各球種やカウントを想定しながらコースへ投げる。

 そこで意識するのがボールを離す感覚。日によって異なる微妙なズレを実戦形式で調整することによって、コンディションの誤差を最小限に抑えマウンドに上がることができる、というわけだ。

「自分の状態を確かめるには最適というか。'11年まではたまにしかやっていなかったんですけど、'12年は毎回やりました。いい感覚でマウンドに行けるので、今ではすごく重要な調整にはなっていますよね」

 先発を経験したことで中継ぎとしての責任感がさらに増し、さらには自らの投球を安定させるための準備をも構築させた。

【次ページ】 WBCでもその絶対的な信頼感が期待されている。

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