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なぜこの時期にホームで大敗した?
浦和の“正攻法”、その弱点と可能性。
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byAFLO
posted2012/09/29 08:01
原口、柏木、リシャルデスの強力な攻撃陣を自在に操る阿部が浦和の攻撃を始動させる。厳しいマークが予想される終盤戦、前線へ効果的なパスを出し続けることができるか。
中央からの突破を狙うのが浦和の“正攻法”だが……。
速攻の際には、ともにスピードを活かした突破力を特長とする平川と梅崎にボールを預け、そこに柏木やマルシオ、原口が絡んで縦に速い攻撃を仕掛ける。一方で遅攻の際には縦に急がず、まずはサイドに預けてダメなら中央、中央がダメなら逆サイド、それでもダメならまた逆サイドといった具合に、ボールを回しながら突破口を探す。最大の狙いは、サイドチェンジで揺さぶって相手の陣形を崩すことにある。
しかしこの場合、最終的に出される仕掛けのパスは、中央から中央への縦パスが多い。両サイドへの展開はあくまで相手の陣形を崩すための布石。スペースを消されたサイドから縦への突破を仕掛けるよりも、数的に厚みのある中央を狙うほうが攻撃の厚みは増す。
最終ラインの永田充やボランチの鈴木啓太、あるいは阿部勇樹から縦に速いクサビのパスを入れ、狭いエリアでのテクニックと創造性が際立つ原口とマルシオ、柏木の3人でフィニッシュまで運ぶ。そこにボランチが絡むことができればセカンドボールの奪取率が高まり、2次攻撃、3次攻撃へと発展する。
これが浦和の“正攻法”である。
攻撃の最前線となる原口へのパス経路を潰したG大阪。
しかしこの日、永田や阿部、鈴木から送られる原口への仕掛けの縦パスは、G大阪守備陣にことごとく潰された。それが浦和の中央攻撃が機能しなかった最大の理由である。
守備側が頭に入れるべき手順はこうだ。
まず、最も怖い速攻を回避するため、特にボールを失った際の切り替えを徹底し、前線からボールを追う。攻撃を遅らせたら相手のパスワークを外方向に誘導し、リスクの少ないサイドでボールにアタックを仕掛ける。ここで2対1の状況を作って挟み込めればボールを奪える確率は上がるし、奪えなくても下げさせればいい。
次に狙うべきは、中央後方から原口に出てくる縦パス。最前線で起点となる原口を潰せば、マルシオと柏木が絡む中央攻撃を阻止することができる。狙いを明確にしてインターセプトに成功すれば、相手のお株を奪う速攻に転じることもできる。
この攻防は立ち上がりから何度も見られた。
3分にはセンターサークル付近で阿部からパスを受けた原口がマークをかわし、右サイドに展開。5分には再び阿部との連係で原口がポストワークを繰り返して、攻撃の流れを作った。しかし、7分には鈴木の縦パスが原口が受けようとするタイミングと合わず、直後の8分には原口のミスで好機を逸した。逆に、15分には阿部と原口のタイミングがピタリとあったが、阿部がミスキック。21分には最終ラインの永田が見事な縦パスを通すが、原口が倒されて流れが寸断された。
時間を追って明らかに対応力を増していくG大阪守備陣の前に、浦和の中央攻撃は機能しなかった。