野ボール横丁BACK NUMBER
強豪私学の時代に公立は勝てるか?
甲子園で勝つための“特別なこと”。
text by
![中村計](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/7/2/-/img_720b9384f6e56806e6e4642095e7e5f26497.jpg)
中村計Kei Nakamura
photograph byHideki Sugiyama
posted2012/08/06 12:45
![強豪私学の時代に公立は勝てるか?甲子園で勝つための“特別なこと”。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/2/6/700/img_260592aa9d72a844c5a50a49306c392f327626.jpg)
2011年の夏の甲子園で、もっとも記憶に残った試合ひとつともいえる、3回戦の如水館vs.能代商。熱闘は延長12回まで続いた。
能代商のような公立校が優勝するにはどうすればいい?
近年、ノーマーク校の活躍という意味で、もっともドラマチックな戦いを見せてくれたチームは、昨年の能代商ではなかったか。
秋田県勢として夏の甲子園13年連続初戦敗退という不名誉な記録をストップさせただけではない。能代商は一昨年も甲子園に出場し、そのときは鹿児島実に0-15という大敗を喫している。そして昨年、1回戦で同じ鹿児島代表の神村学園に5-3で勝利し、雪辱を果たしたのだ。
あれだけの敗北を経験し、翌年、すぐさま出てきて借りを返したチームなど見たことがなかった。
ADVERTISEMENT
能代商は続く2回戦では、英明(香川)の「高校ナンバー1左腕」の呼び声も高かった松本竜也(巨人)を攻略し2-0で勝利。3回戦は如水館を相手に延長12回を戦い2-3で散ったものの、9回と10回に、二度の本塁クロスプレーでサヨナラを防ぐなど何度となく見せ場をつくった。
そんな能代商を率いていた工藤明と、6月にゆっくりと話す機会があった。
そこで冒頭のような話をした。
「逆に、何か特別なことって、しなくちゃいけないのかな?」
本州の日本海勢(山口を除く)は、甲子園でまだ一度も優勝を経験したことがない。その日本海勢が、しかも、能代商のような公立校が優勝するにはどうすればいいと思うか、と。
すると、あっさりこう返された。
「逆に、何か特別なことって、しなくちゃいけないのかな、って思うんですけど」
憑きものが落ちたような感覚があった。そうなのだ。何か特別なことをしなければいけないと思うこと自体、すでに負けを認めているようなものだ。
44年間、オリンピックに出場したことのない男子ホッケーの関係者も言っていた。
「何度もあと一歩のところまでいった。でも、勝てない。正直、わからなくなっている。その何かをわれわれは未だに見つけられないんです」
「何か」など、おそらくない。
思うからそれにからめとられてしまうわけであって、思わなければ、そもそも何もないかもしれないのだ。