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強豪私学の時代に公立は勝てるか?
甲子園で勝つための“特別なこと”。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byHideki Sugiyama
posted2012/08/06 12:45
2011年の夏の甲子園で、もっとも記憶に残った試合ひとつともいえる、3回戦の如水館vs.能代商。熱闘は延長12回まで続いた。
近年、夏の甲子園は有力校の「圧勝V」が続いている。いわゆる強豪私学の時代といっていい。
もちろん、それはそれで楽しみ方はある。だが、身勝手を承知で言うと、やはりノーマーク校が大方の予想を覆すような「ドラマ」も見てみたい。
春先、富山のテレビ関係者から「どうやったら富山県勢が甲子園で優勝できるのか」という番組をつくりたいので相談に乗って欲しいとの連絡があった。
何でも富山と山形の2県は、未だに甲子園でベスト4以上に勝ち進んだことがないのだという。つまり、全国で勝てないワースト2なわけだ。
たとえば、そんな富山県勢が優勝するような「ドラマ」――。
そのテレビ関係者とは、メールで何度かやりとりをしている内に火がついてしまい、一度、東京で会う機会があったのだが、コーヒー1杯で3、4時間も話し込んでしまった。
いろいろな話をした。'04年、'05年と夏連覇を成し遂げた駒大苫小牧(南北海道)は、雪国というハンディキャップをどう味方につけたのか。'07年に佐賀北が公立進学校でも勝てた理由。'10年、興南が「沖縄勢は夏に弱い」という定説を覆し、春夏連覇を達成できたのはなぜだったのか。
「でもな……」と、勝てない理由がいつも頭をもたげてくる。
それらの要素をすべて集約させることができれば、富山であっても、日本一は夢ではないのではないか、そう力説した。
ただし、そう言いつつも、一方で「でもな……」と勝てない理由が頭をもたげてきてしまうのも事実だった。どれだけできる理由を並べても、やはり、決定的とも思える“できない理由”に抗え切れない。それが凡人の発想の限界ということか。
そう悶々としている頃、ある人物と会った。