プレミアリーグの時間BACK NUMBER
プレミアでも典型的CFは絶滅危惧種!?
キャロルらターゲットマンの生きる道。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2012/08/02 10:30
191cmの恵まれた体格を持ち、エリア内では無敵の強さを誇るキャロル。しかし、本格派ストライカーとしてその存在価値を証明するためには、更なる得点が必要になる。
パスサッカーのトレンドを取り入れたリバプール。
必然的に、カットインから利き足で相手ゴールを脅かす場面が増え、サイドを深くえぐってのクロスという展開は減った。縦に突破したとしても、逆足からのラストパスは、グラウンダーのカットバックというケースが多い。得意のヘディングを打てないCFは、ゴールという食糧の供給源が乏しくなる一方だ。
こうした変化の波は、ドーバー海峡を渡ってイングランドにも到達している。6月にリバプールの監督となったブレンダン・ロジャーズは、ポゼッション志向が極めて強い若手監督だ。弱小クラブのスウォンジーを、4-3-3システムを基本とする国内随一のパスサッカー集団に仕立て上げ、昇格1年目の昨季にプレミア中位を実現してヘッドハントされた。
「チーム作りの全権掌握」を条件にビッグクラブでのチャレンジに踏み切ったロジャーズは、新任地でも、後方から辛抱強くパスをつなぐ攻撃スタイルを貫くに違いない。昨季のスウォンジーの選手たちは、プレッシャー下で縦に大きく蹴り出す「弱気」が顔を覗かせるようなことがあれば、試合後の控え室で指揮官の説教を受けた。
つまり、ロジャーズのチームにロングボールの標的は不要。パス回しに絡める手頃なFWとして、フルアムで2列目起用も多かったクリント・デンプシーを獲得すべく、「移籍金+キャロル」のオファーを検討中とも言われるのだから、リバプール伝統の「9番」も哀れなものだ。
プレミアではターゲットマンとしてのCFはまだ必要!?
もっとも、CFの行く末に楽観的な「9番」もいる。例えば、アストン・ビラのダレン・ベント。怪我で今夏のEUROを欠場したイングランド代表FWは言う。
「絶滅の危機? そんなわけないさ。あるとしても、それはスペインだけの話。ウチの新監督(昨季までノリッチのポール・ランバート)からは、持ち場のボックス内で仕事をしろと発破をかけられているよ」
筆者もベントに同感だ。プレミア上位勢でも、「ターゲットマンお断り」の看板を掲げられるのは、既にパスサッカーのスタイルを持つアーセナルと、新監督が同スタイル確立に邁進すると思われるリバプールとトッテナム(アンドレ・ビラスボアス監督)ぐらいだろう。