プレミアリーグの時間BACK NUMBER
プレミアでも典型的CFは絶滅危惧種!?
キャロルらターゲットマンの生きる道。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2012/08/02 10:30
191cmの恵まれた体格を持ち、エリア内では無敵の強さを誇るキャロル。しかし、本格派ストライカーとしてその存在価値を証明するためには、更なる得点が必要になる。
欧州進出組にとっては「CFらしいCF」はまだまだ有効。
マンCのロベルト・マンチーニ監督は、現実主義者として知られる。必要とあれば、縦に速いカウンター狙いも厭わないはずだ。マンUでは、アレックス・ファーガソン監督が、若手CFのダニー・ウェルベックに対し、「下がりすぎるな。前で焦点になれ」と注文をつけている。ディディエ・ドログバのフィジカルを武器に昨季CL王者となったチェルシーでは、元来ショートパス志向のロベルト・ディマッテオ監督が、ベテランCFが上海に去った後も、「スタイル急変はない」と公言済みだ。
CFをCFらしく生かす攻撃は、特に欧州進出組にとって有効なオプションでもあり続ける。高さと言えば、イングランドには身長2mを超すピーター・クラウチがいるが、代表戦42試合22得点という高得点率は、ロングボールとハイクロスへの対処に不慣れな敵が多い証拠だ。クラブレベルでも、クラウチが所属するストークは、CF陣の高さと強さを前面に押し出し、昨季のヨーロッパリーグで3次予選からグループステージ突破と、上々の成果を残している。
絶滅危惧種のCFが生き残る道はさらに決定力を磨くこと!
さすがに、チャンスメイクの手段がロングスローとロングボールにほぼ限られる、ストークほどのターゲットマン依存派はリーグに1チームで十分だ。しかし、機を見て早めにCFに当てるダイレクトなアプローチは、過去の遺物として簡単に葬り去ってしまうべきものではない。育成の世界はともかく、プロの世界では結果が問われるのだから。
実際、見た目に美しいサッカーで、8年前にはリーグ無敗優勝まで成し遂げているアーセナルでさえ、昨季で無冠7年目ともなれば、あのアーセン・ベンゲル監督に対して、ファンの間で不信任が囁かれるのだ。国内では、昨季CL準決勝でチェルシーに敗れたバルセロナに対しても、「10人になって必死に守る敵に対する効果的な攻撃オプションを持たない」という批判の声が聞かれた。
CFには、ことイングランドでは、生きる道が残されている。トレンドの犠牲者としての氷河期を生き抜くためには、ゴールにしろ、アシストにしろ、限られた機会に仕事をする決定力を磨くのみだ。もしも、昨季のドログバが、バルセロナ、あるいはバイエルンとのCL戦で、文字通りのワンチャンスを得点に変えられずにいたら、チェルシーは、チャンスの少なさだけを叩かれ、先発したCFは存在意義の薄さを指摘されていただろう。