Jリーグ観察記BACK NUMBER
Jリーグ新監督達の理想と現実。
シーズン前にチームをどう変える?
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byNanae Suzuki
posted2012/01/17 10:31
昨年のJリーグ最終節、浦和レッズは1-3で柏に敗れて15位に終わった。降格は逃れたものの、選手のポテンシャルを十分に引き出せたとは言いがたいシーズンとなってしまった
今季J1とJ2合わせて18クラブが、新監督を迎えてスタートする。そういったチームにとっては監督のやりたいことを少しでも早く共有するため、シーズン前の合宿がとても大切になる。そこで、それぞれの監督は、自分なりのやり方で戦術と戦略を選手たちに植え付けようとするのである。
ただし、監督というのは、ただ自分の考えを選手に浸透させればいいというわけではない。チームにいる選手たちが、監督の求めるサッカーをできる“技術”を持っていたとしても、それを90分間実行する“体力”があるとは限らないからだ。
たとえば、自陣でブロックを作ってカウンターを狙うのと、前線から激しくボールを奪いに行くのとでは、求められる“体力”が違ってくる。後者の方が圧倒的にスプリントの回数が多くなるため、前回のコラムで紹介したレイモンド・フェルハイエンの理論で言うところの「回復の速さ」が必要になってくる。
つまり、何を言いたいかというと、新監督は前任者がどんなサッカーをしていたかということまで考慮して、選手たちのコンディショニングのプランを練らなければいけないということだ。
前任者のサッカースタイルの後遺症に悩まされる新監督たち。
この問題に苦しんだのが、2009年に浦和レッズの監督に就任したフォルカー・フィンケだった。
フィンケは長短のパスを織り交ぜる“コンビネーションフットボール”を目指したが、それ以前の浦和は一発のロングパスで局面を打開するようなサッカーをしていたために、90分間主導権を握るようなコンディショニングにはなってなかった。体力測定をしたところ、あまりの数値の低さにフィンケは頭を抱えたという。結局、このギャップを埋めることができず、2シーズンで日本を去らなければいけなかった。
今季、サンフレッチェ広島を率いていたミハイロ・ペトロビッチが浦和の監督に就任したが、昨季はゼリコ・ペトロビッチがシーズン途中に解任されて方向性が二転三転したことを考えると、フィンケと同じような問題に直面するかもしれない。
また、昨季、川崎フロンターレにやって来た相馬直樹監督は、プレーエリアを前方に設定した切り替えの速いチームを作ることにチャレンジしたが、結果が伴わずに苦しんだ。これも関塚隆監督時代から継承されてきたスタイルとの違いが影響したと思われる。