Jリーグ観察記BACK NUMBER
Jリーグ新監督達の理想と現実。
シーズン前にチームをどう変える?
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byNanae Suzuki
posted2012/01/17 10:31
昨年のJリーグ最終節、浦和レッズは1-3で柏に敗れて15位に終わった。降格は逃れたものの、選手のポテンシャルを十分に引き出せたとは言いがたいシーズンとなってしまった
現状を見極めて、徐々に理想に近づけたヒディンク。
では、監督交代があったとき、どうすれば現状の体力と、必要な体力のギャップを埋めることができるのだろうか?
参考になるのは、2008-2009シーズン途中の2月、ヒディンクがチェルシーの監督に就任したときのやり方だ。
ヒディンクは前線から激しくプレスをかけるサッカーをやろうと考えたが、前任者のスコラーリは自陣にブロックを作るサッカーをしていた。そのため選手たちの体は、ハイプレス向けになってない。いきなり“理想”を要求したら、破綻する可能性がある。
そこでヒディンクはオランダからレイモンドを呼び寄せて選手の肉体改造を任せた一方で、戦術面では“折衷案”を提案した。いきなりハイプレスを目指すのではなく、まずはセンターラインの少し前方に、プレスをスタートするラインを設定したのだ。これなら選手たちに負荷がかかりすぎない。
乖離する理想と現実に監督はどう向き合うべきか?
ヒディンクは、選手の体のできあがり具合を見ながら、少しずつプレスのラインを前進させ、最終的には相手のペナルティボックスのすぐ手前に設定した。チェルシーがプレミアリーグで3位、チャンピオンズリーグでベスト4、FAカップで優勝という好成績を残せたのは、ヒディンクが“やりたいサッカー”と“現状の体力”のギャップに正しく対処したからと言っていいだろう。
いくら「切り替えを速くしろ」、「プレスをかけ続けろ」と要求しても、それだけでは限界がある。新監督、そして初年度に結果がでなかった2年目の監督が、シーズン前の合宿で理想と現実のギャップにどうアプローチするのか。シーズンの行方を占う材料のひとつになるのではないだろうか。