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“つなぎの野球”ができない阪神。
ならば「1番・鳥谷」の積極打線を! 

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氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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photograph byTamon Matsuzono

posted2010/03/19 10:30

“つなぎの野球”ができない阪神。ならば「1番・鳥谷」の積極打線を!<Number Web> photograph by Tamon Matsuzono

2009年のシーズンは、安打、得点、打率、長打率、OPSでチーム1位を記録している。2010年から赤星に代わり阪神の選手会長に就いた

今季の阪神は緻密な野球よりも重量打線を売りにすべき。

 では、阪神の1番打者はどうあるべきなのか。

 ある解説者が、昨シーズンの終盤にこんな話をしていた。

「今の阪神には以前のような僅少差を守って勝つ、という試合ができるほどの投手陣がそろっているわけではない。JFKは崩壊したわけやから。それを考えると、多少はおおざっぱでも、攻撃的な布陣で臨んだ方が今はいい」

 オープン戦を見る限り、今年の阪神には緻密な野球は合わない。赤星のような選手が出塁して、足でかき回し、プレッシャーをかけながら攻めていくという野球はどうもできそうもない。100%送りバントができると期待できるのも関本賢太郎くらいのものだ。

 金本、城島、新井貴浩、ブラゼル、桜井広大というホームランアーチストを前面に出したスタイルの方がむしろ合っている。守備面は大きな課題ではあるが、こと攻撃面に関しては、豪快さを売りにして戦った方がいい。

 マートンが適していないというのではなく、「ポスト赤星」という概念から脱却しての1番打者探しが重要なのではないだろうか。

初球から積極的にバットを振る鳥谷に1番を!

 昨シーズンの中で、阪神がもっともらしさを見せた試合は昨年9月16日の巨人戦にあったように思う。先頭を打った浅井良が先頭打者本塁打で打線に火をつけ、鳥谷敬が2本の本塁打を叩きこみ、爽快な逆転勝ちを収めた。阪神打線のポテンシャルが最大限に引き出された試合だった。

 だから鳥谷や浅井のようなタイプが、今の重量打線の火付け役によく似合うような気がしてならないのだ。

 ただ、浅井に関しては故障が付いて回るという危険性がある。昨シーズンはフルに活躍することはなかったし、今年のキャンプに入ってからも本調子でプレーできていない。その点で浅井の抜擢を避けるのなら、やはり鳥谷を強く推したいのである。

 まだ赤星が活躍していた昨年のコラムでは、鳥谷の適性は「3番」と書いた。阪神の顔となるべき鳥谷には、重要なポストでの活躍が必要と思ったからだ。ここへきて鳥谷を1番に推すことは話がブレると指摘されるかもしれない。

 しかしチーム全体に緻密な野球が似合わないという現状、さらにオープン戦から積極的な打撃を見せ、タイトル獲得の予感も漂う鳥谷に、この強力打線のかじ取りを任せてみるのも一つの手ではないだろうか。「色々考えて打席に立てている。初球から行くつもりでもタイミングの合う・合わないはある。そこの柔軟性が出てきたから、どんどん初球からでも打っていけるようになっている」と指揮官である真弓監督も鳥谷の成長に目を細めているのだから。

【次ページ】 攻撃的野球で優勝した'85年の1番は真弓監督だった。

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