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名将とブルペン。
~ワールドシリーズ勝敗の鍵は?~
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芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2011/10/20 06:01
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ワールドシリーズ初制覇を狙うレンジャーズのロン・ワシントン監督(左)と3度目の戴冠を窺うカーディナルスのトニー・ラルーサ監督
やれやれ、である。
まったくもう、ともいいたくなる。
9月末日、私は願望をこめてタイガース対ブルワーズのワールドシリーズを予想した。
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それが、あっさりと覆された。ALCSでタイガースはレンジャーズに敗れ、NLCSでブルワーズはカーディナルスに屈した。つまり、やってきたのは「裏番組」である。レンジャーズ対カーディナルスのワールドシリーズ。見たいような、見たくないような。
いや、やはり見ることになるだろうな。ポストシーズンがはじまる前だったら、ふん、そんなカード、と鼻で嗤ったかもしれないが、短期決戦を勝ち抜いてきた姿には、やはりそれなりの風味が備わってきている。
しかし、両者は似た者同士だ。
打撃陣と救援投手陣がともに活躍している両チーム。
第一に、どちらもよく打つ。それも、ネルソン・クルーズ(レンジャーズ)やデヴィッド・フリーズ(カーディナルス)といった伏兵が大活躍だ。LCSのOPS(出塁率+長打率)を見ても、上位6選手のうち5人までが両球団から出ている(例外はタイガースのカブレラだけだ)。レンジャーズからは、クルーズとマーフィ。カーディナルスからは、フリーズ、プーホルス、ホリデイ。ハミルトンやヤングやバークマンも、そろそろ調子を上げてくるのではないか。
2番目の共通点は、ブルペンの活躍だ。裏を返せば、先発投手陣が総崩れになったところを、救援投手陣がスクラムを組んでがっちりと支えている。
LCSでのデータを挙げよう。
レンジャーズは6試合で56イニングスを戦ったが、ブルペンはそのうち27回3分の1を投げた。先発の失点は21点で、ブルペンの失点はわずか4点だった。
一方のカーディナルスも、6試合で53イニングスを戦い、ブルペンは28回3分の2を投げた。先発の失点は19点で、ブルペンの失点は7点。
どちらも、眼をみはる数字だ。なかでも光るのは、レンジャーズのオガンドだろうか。レギュラーシーズンでは先発の一翼を担っていたが、ポストシーズンでは中継ぎにまわって11試合中7試合に登板した。投球回数は10回3分の1で、防御率は0.87。先発投手の炎上を彼が消し止め、そのあとをアダムズやフェリースが引き継ぐという形は、レンジャーズ勝利の方程式になりつつある。