MLB東奔西走BACK NUMBER
メディアを通じた選手批判は御法度!?
MLBで名監督になるための条件とは。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2011/10/17 10:30
昨シーズン途中からダイヤモンドバックスの監督代行を務め、今シーズンからチームを指揮するカーク・ギブソン監督。選手との対話を何よりも大事にすることで、昨シーズン65勝97敗、勝率.401と低迷していたチームを見事に復活させた
各地で熱戦が続くプレーオフの取材を続けている中、日本から届いたニュースに目を奪われた。42歳のベテラン、山﨑武司選手の今シーズン限りでの楽天退団が決まったのだという。しかも報道によると、球団首脳陣との衝突が原因だったらしい。一部には、何の説明もないまま先発から外された起用法を巡り、コーチとの間でいさかいがあったとも報じられている。いずれにせよ退団発表に臨んだ山﨑が流した涙は決して晴れやかなものではなかっただろう。
奇しくもプレーオフを観戦しながら、改めてメジャーの監督像について思いを巡らしている矢先のことだった。そしてここでも、日米の違いに直面することになった。
若手の台頭で勝ち上がった2チームの共通事項。
今シーズンは史上類を見ない壮絶なワイルドカード争いの末、プレーオフ8チームが出揃った。優勝候補が順当に進出を果たす中、予想外だったのがダイヤモンドバックスとレイズの2チームだった。
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この両チームの躍進を支えたのが若手の台頭である。
今シーズン公式戦出場を果たした全選手のうち新人資格のある選手の数はダイヤモンドバックスが8人、レイズが13人。
それらの選手の中には、ダイヤモンドバックスならジョシュ・コールメンター、ブライアン・ショー、ポール・ゴールドシュミット、コリン・カウギル。レイズならジェレミー・ヘリックソン、ブランドン・ゴメス、シーザー・ラモス、デスモンド・ジェニングス──とシーズン開幕、もしくは途中からメジャーに定着し、主力選手としてチームのプレーオフ進出に貢献した選手たちがいる。そして、彼ら若手選手の成長を支えたのがふたりの監督の存在だ。
とにかく陽気でおしゃべり好きなレイズのジョー・マドン監督と、感情を表に出さず淡々と話すダイヤモンドバックスのカーク・ギブソン監督。
2人はまったくかけ離れたキャラクターを有している。だが、監督としての采配という面では非常に類似している。その根底にあるのが“選手との対話”だ。
選手との個別対話と明確なビジョンの共有。
ブルワーズとの地区シリーズ中も、会見に登場したギブソン監督は、常に選手とコミュニケーションをとっているというエピソードをたびたび披露していた。第2戦で大乱調だったブラッド・ジーグラーについて質問された時には、次のように答えている。
「昨日のチーム練習の時に、彼をハグして愛していると伝えた。そしてあの投球は本来の投球ではなく、あそこから学んでほしいと話した」
とにかく選手との個別対話を非常に大切にしているのが窺える逸話だった。ギブソン監督は、若い選手たちに明確な目標を与え、叱咤激励しながらモチベーションを上げ続けようと日々努力しているのである。ギブソン監督の言葉でいうと、以下のようなことになる。
「明確な目標を掲げ、それをどのように達成するかのビジョン、考え方を築き上げ、そして皆を一体化させること。我々はシーズンを通してそれを実行できた」