メディアウオッチングBACK NUMBER
一日中つぶやき続ける
アメリカの野球記者たち。
~スクープはツイッターで!?~
text by
奥田秀樹Hideki Okuda
photograph byYukihito Taguchi
posted2011/03/07 06:00
昨年のMLBオールスター試合のとき、イチローを囲む多くの記者たち。彼らのうち何人がツイッターをしていたのだろうか
紙の新聞が先細りのアメリカで、デンバーポスト紙のトロイ・レンク記者が「これこそ新しいビジネスモデル」と言う形が、少なくとも野球記者の間で成長を遂げつつある。ロッキーズ担当のレンクはシーズン中だと、1日に50回くらいツイッターでつぶやくそうだ。ツイッターは他のどんなメディアよりも速報性に優れている。そこでその日発表されてすぐのラインナップに始まり、試合前の監督会見の模様、ロッカールームで聞いた選手の話など、逐一そして即座に報じていく。
もちろん、ツイッターでいくらつぶやいてもお金にはならないが、彼のつぶやきをフォローした人がそれで興味を持ち、デンバーポスト紙のウェブサイトを訪れてくれれば良い。記事やブログを読み、頁ビューが増え、広告収入がアップする。
「紙の新聞だけだと、その日のゲームノートと試合のストーリーを書くだけでよかった。それが今ではツイッター、ブログ、ウェブ、紙の新聞と書き分け、休む時間がなくなったよ」。彼のフォロワーはこの1年で3000人から9000人と3倍に膨れ上がった。その数字に新聞業界の未来があるということか。
10分おきに他人のつぶやきをチェックする記者たち。
ツイッターは記者のアウトプットの方法だけでなく、インプットの手段も大きく変えた。ロサンゼルスタイムズ紙のドジャース担当、ディラン・ヘルナンデス記者は朝から晩まで、10分おきにブラックベリーの携帯電話で他の人のつぶやきをチェックするという。常時フォローするのは約500人。そのうち5分の1が現役の野球選手で、他にも球団関係者、代理人、中には選手の姉なども網羅する。彼の500人はさすがに多いが、他の記者もほぼ同じ作業に従事。こうして記者達は一日中ツイッター漬けなのだ。
この新しい仕事のやり方に、私も何度か唖然とさせられたことがある。咋年12月のウインターミーティングでのこと。ホテルの廊下でアスレチックスの担当記者にばったり会い、松井秀喜の代理人が契約交渉の進捗状況をこう話していたよと教えてあげたら、彼女は携帯に何やら打ち込んでいる。そして頭を上げると「良い情報をありがとう!」とニッコリ。そのままツイッターをしていたのだ。