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一日中つぶやき続ける
アメリカの野球記者たち。
~スクープはツイッターで!?~ 

text by

奥田秀樹

奥田秀樹Hideki Okuda

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photograph byYukihito Taguchi

posted2011/03/07 06:00

一日中つぶやき続けるアメリカの野球記者たち。~スクープはツイッターで!?~<Number Web> photograph by Yukihito Taguchi

昨年のMLBオールスター試合のとき、イチローを囲む多くの記者たち。彼らのうち何人がツイッターをしていたのだろうか

ストーブリーグの報道ではツイッターが主役に。

 この2年間で気づくのは、とりわけストーブリーグの報道でツイッターが主役の座を奪ってしまったことだ。メジャーではフリーエージェントの選手が毎年150人くらいいて、トレードも盛ん。連日出てくるスクープを紙やウェブで出していたのでは手遅れ。140字で一番に報じたものが勝者として認定される。

 かつては米国の野球記者といえば、ポール・ギャリコやレッド・スミスのような美文家が、巧みで内容のある文章を綴り名声を博した。それが今やスピードが全て。レンク記者は「記者であれば、当然いい文章を書いてそれを売りにしたい。それなのに、ティーンエイジャーの会話レベルの短い文を書きとばす。このままだと、長い文章の書き方を忘れてしまいそう」と嘆く。実名は伏せるが、書くものの95%がツイッターで、それでトップレベルのスター記者になった者もニューヨークに一人存在するのである。

「大勢の人とスポーツバーで騒いでいる感覚なんだ」

 果たしてこの流れはどこに向かうのか。中にはツイッターのアカウントも持たない従来通りの記者もいるが少数派。大多数はこの変化を「進化」と見なしている。

 シアトルタイムズ紙のベテラン記者ラリー・ストーンは言う。「最初はツイッターなんてと思っていたけど、最近は面白くて仕方がない。例えばスーパーボウルのようなビッグイベントの最中、多くの人が試合を見ながら、リアルタイムにいろんなつぶやきをしており、多種多様な考え方、楽しみ方を共有できる。大勢の人とスポーツバーで騒いでいる感覚なんだ」。

 超高速の文字が、新しい楽しみ方を創造するのである。

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