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FAの人的補償はどうあるべきか?
高濱卓也の移籍劇に潜む逆説。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2011/03/07 10:30
横浜高では1年時からレギュラーで、2年時に3番・遊撃手として出場したセンバツでは優勝の原動力となった。膝の故障に悩まされてきたが、今季は飛躍が期待されていた
将来高濱をFAで獲得すると“第2の高浜”が生まれる!?
「びっくりした、というか言葉が出なかった。『今年はやってやるぞ』という気持ちが強かったし、3年間、ケガばかりだったので……。阪神に何ひとつ貢献できなかった。本当に申し訳ないと思います。だから獲ってもらった阪神で、という気持ちがもの凄くありました」
会見に臨んだ高濱は、鼻をすすりながら無念の思いをこう吐き出した。
それに対して、阪神の坂井信也オーナー(阪神電鉄社長)が送ったのが、冒頭の惜別の言葉だった。
ロッテで才能を花開かせて、FAで阪神が再び取り戻すような選手になって欲しい。泣く泣く手放す期待の若手へのエールでもあった。
だが、だ。
よくよく考えてみると、そうなったときにはこんなパラドックスが起こる。
高濱がロッテで超一流に成長して、FAで再び阪神に戻ってくる。そのときに、実はまた“第2の高濱”を出さなければならないということだ。
FAでの人的補償は止めてドラフト指名権を担保にしてはどうか?
現行のFA制度では、移籍選手が前所属チームの日本人選手年俸上位3位以内ならAランク、4位から10位までならBランク、それ以下ならCランクとランク付けされ、A、Bランクの選手を獲得したチームは人的補償を含めた見返りを出さなければならない。
ならば高濱がA、Bランクの年俸を稼ぐ選手となって阪神に戻ってくるとすれば、再び、阪神は人的補償で若い有望な選手を手放さなければならなくなるということだ。
特に海外移籍がますます増えることが考えられる今後は、契約がキャンプイン直前までずれ込むことが多くなる。当然、それに付随する人的補償が発生すれば、こうしてキャンプイン後の移籍が頻発することにもなりそうだ。
そこで思う。
人的補償は止めにして、FAで選手を獲るときには、メジャーと同じようにドラフトの指名権を担保にしてはどうだろうか。