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野球クロスロードBACK NUMBER
「俺は野球学校の出身じゃないから」母校は偏差値70の進学校「国立大を出て公立校の教師に」のはずが…甲子園30勝の名伯楽に? ある異色監督の履歴書
text by

田口元義Genki Taguchi
photograph byGenki Taguchi
posted2025/03/25 06:01

センバツの初戦に勝利し甲子園通算30勝を達成した福島・聖光学院の斎藤智也監督。一方でその経歴は、高校野球指導者としては異色のものだった
2023年の夏に29勝目を挙げて「王手」をかけてから、こういった質問は何度も受けてきた。だから、この斎藤の反応は当たり前と言えば当たり前なのだが、「30勝」にまつわるある領域を知らされると、少し驚いたように目を見開いていたものだ。
「17人しかいないの!?」
100年以上も続く甲子園の歴史のなかで、通算30勝以上を達成した監督がその数しかいないという現実。自身の勝利数にさして関心を示さなかった斎藤であっても、「へぇ、そうなんだぁ」と感慨深げだった。
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わずか17人には錚々たるメンツが揃う。
現役ながら1位の70勝を記録している大阪桐蔭の西谷浩一。2位には智辯学園・智辯和歌山の高嶋仁、3位にはPL学園の中村順司……高校野球ファンならば誰もが知る名将ばかりだ。
この豪華な顔ぶれのほとんどが、野球人として華やかなキャリアを誇る。
名門校の出身。若くして監督となり、無名の高校を強豪へと押し上げた――そんな多士済々のなか、斎藤の経歴はいささか異色だ。
県下有数の進学校出身…甲子園出場経験はナシ
福島県福島市出身。県下有数の進学校である福島高を出ており、甲子園出場はない。この点で言えば、取手二と常総学院で日本一を経験し、通算40勝を挙げた木内幸男が茨城の進学校である土浦一出身ではあるが、彼は高校を出てほどなくしてチームを指揮している。斎藤にしても、将来的には高校野球の監督を志していたが、最優先は「筑波大学を出て公立の体育教師になる」ことだった。
ところが、ここで斎藤の人生に大きな転機が訪れる。
<次回へつづく>
