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「遅い球が多くて…」センバツ“飛ばないバット”時代に現れた浦和実“初見殺しサウスポー”って何者?「アベレージは125キロ」超変則エースの正体
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田口元義Genki Taguchi
photograph byJIJI PRESS
posted2025/03/25 11:00

120キロ台の直球が中心ながら昨夏全国ベスト8の滋賀学園を完封した浦和実の石戸颯汰。「超変則サウスポー」はまさに初見殺しだった
監督の山口達也は敗戦の弁として、石戸のピッチングをいの一番に挙げていた。
「フォームが変則でタイミングが取りづらいことはわかっていたんですけど、バッターが立ち遅れてしまったといいますか。フライアウトが16ですよね? ボールの下にバットが入っている感じに見えましたし、それじゃあランナーは溜められないですよね」
今後「こういうタイプのピッチャーが増えてくる」
そう言って唇を噛む山口にも「初見の難しさ」を問うと、確信めいたように言い放った。
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「これから、こういうタイプのピッチャーが増えてきますよ。今回は負けましたけど、いい経験にしたいと思います」
山口の分析からは様々な解釈ができるなか、ひとつ挙げるとすれば昨春から導入された、「飛ばない」とされる新基準バットをピッチャーが利用してくるところだ。
石戸のようなタイプは、まさに飛ばないバットの“申し子”と言えるかもしれない。
「新基準バットになって変えたところは特にないんですけど、飛ばなくなったことでフライアウトが増えたかなって思います」
石戸自身がそう実感しているように、変則左腕のボールを間近で受けているキャッチャーの野本は、「飛ばないバット」と「変則ピッチャー」による相乗効果を感じながらリードするようになったと話す。
「石戸のボールはスピードがない分、前のバットだと芯を外したとしても外野の頭を超えられることがあったんですけど、今のバットでは長打が少なくなりました。それがわかるようになったので、インコースもどんどん突いていける配球もできるようになりました」
飛ばないバット時代の“初見殺し”。
脅威を与える初出場チームのサウスポーは、次も大物食いを虎視眈々と狙う。
