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核心にシュートを!BACK NUMBER
「日本はチームバスケです」…バスケ代表・吉井裕鷹(26歳)がアジア杯予選で語った胸中「コミュニケーションが大事」「話さないとチームがつながらない」
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byJMPA
posted2024/11/28 18:01
グアム戦後には試合内容に納得がいかず厳しい表情を見せた26歳の吉井裕鷹。今後の代表チームはアメリカよりヨーロッパ型を目指すべきと語る
世間の人たちは、昨年の沖縄W杯や今年のパリ五輪を経て、「中心選手としての自覚が新たに芽生えたのではないか」と見ているかもしれない。
ただ、本人はそうではないと考えている。プロ選手として経験を積み、ホーバスHCのバスケットボールに慣れてきたことで、本来持っていた責任感や危機感を言動で示す「余裕ができた」ことが大きいという。
「とにかくコミュニケーションが大事です。話さないと(チームが)つながっていかないので。意識してハドルを組んだりすることなどが、メチャクチャ大事になってくると思います。目に見える部分以外のところで、チームをしっかりまとめる必要がある。そのあたりの姿勢は、アルバルクで培わせてもらったものです」
吉井は練習生時代を含めると、計5シーズンもアルバルク東京で過ごした。そこではヨーロッパ・バスケの源流である旧ユーゴスラビアの一翼を担っていたセルビア出身のルカ・パビチェビッチHCや、強豪リトアニア代表監督も務めたことのある、同国出身のデイニアス・アドマイティスHCの下で厳しい指導を受けてきた。
「アルバルクでやってきた経験が、僕のバックグラウンドにはあって。それが自信としてあります」
「アメリカよりヨーロッパのバスケに近づないと」
そう自認する吉井は、現在の日本代表の候補選手たちの特長や顔ぶれを見た上で、取り組むべきスタイルについて、こう考えている。
「日本は、アメリカバスケというよりも、ヨーロッパのバスケに近づいていかないといけないと思うので。オリンピックでもアメリカが優勝しましたけど、(アメリカとセルビアによる準決勝は内容的には)セルビアの勝ちゲームでした。そもそも、(NBAの現役最強選手に挙げられるニコラ・)ヨキッチだけであんなバスケはできないと思っていて。やはり、チームバスケです。まぁ、(超人的な能力を持った選手の個人技を活かす)アメリカが、それをやり出してしまったら、それはもう……(お手上げですけど)」
これは吉井独自の考えではなく、現代表の進むべき方針として、多くの人が指摘していることだ。ホーバスHCも著書『スーパーチームをつくる!』(日経BP)のなかで、こう書いている。
「アメリカは、より個人の能力が中心となっていて、バスケットボールの質は落ちていると感じます。日本の場合はヨーロッパのように、よりチームでプレーするところが強調されますから、そこには違いがあります」
そうした状況もわかった上での吉井の発言であることを見落してはいけない。
だから、今シーズンから新たに三遠ネオフェニックスに加入したことも、本人はポジティブに捉えている。三遠を指揮するのは、Bリーグで開幕から6シーズンにわたって千葉ジェッツを率い、Bリーグで指揮を執った指導者のなかでタイトル獲得数がダントツの名将・大野篤史HCだ。彼は、個人の力が勝負をわけることも多いNBAではなく、戦術的に練られたヨーロッパのバスケを参考にすることが多い。