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核心にシュートを!BACK NUMBER
「日本はチームバスケです」…バスケ代表・吉井裕鷹(26歳)がアジア杯予選で語った胸中「コミュニケーションが大事」「話さないとチームがつながらない」
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byJMPA
posted2024/11/28 18:01
グアム戦後には試合内容に納得がいかず厳しい表情を見せた26歳の吉井裕鷹。今後の代表チームはアメリカよりヨーロッパ型を目指すべきと語る
そうやってイジられながら、ときに励まされながら、吉井はシュートを打ち続けた。
重要なのは、チームとしての結果が出たことに満足せず、吉井が現実から目を背けなかったことだ。自身の課題でもあり、チームとしての課題でもあるキャッチ&シュート。とりわけ、その形からの3Pを決めきらなければ高いレベルの相手と戦ったときには勝負にならない。
だから、吉井は黙々と練習を積んできた。今でも、試合前の練習などでその様子はうかがえる。今回のグアム戦でも、試合前に最後までコートに残ってシュート練習をしていたのが彼だった。
その成果は、出場国が12カ国と大幅にしぼられるため、相手の守備のレベルが格段に上がったパリ五輪でも出ていた。最終的に3連敗に終わってしまったあの大会で、河村勇輝と吉井の成長が高く評価されたのはあえて振り返るまでもないだろう。
さらに、五輪後の今シーズンは、Bリーグでも14試合で52.8%という驚異的な3P成功率を見せている。
3Pシュートの成功率ランキング入りの条件(※野球でいう規定打席に当たる条件)は、85%以上の試合に出場し、なおかつ、1試合平均1.5本以上成功すること。現在は1試合平均で1.4本の成功のため、あと少しでランク入りできる状態だ。この確率のままランク入りすれば、もちろん成功率は単独トップに君臨することになる。
驚異的な成功率も「無理をして3Pを打つ必要はない」
ただ、吉井は冷静に現実をとらえている。
「僕はシューターではないので、無理をして3Pを打つ必要はないです。周りの選手が自分をフリーにしてくれたときのシュートを思い切って打つ。それだけです。そういう気持ちがあれば、自ずと入っていくと思います」
理想や進むべき道を明確に思い描き、その実現のために必死で行動する。そして、その必死さのあまり、熱くなることがある。
だから、だろう。グアム戦後にロッカーに戻り、移動着に着替え、ホテルへと戻るバスに乗り込んだ頃にはようやく冷静になり、こんなコメントを残した。
「グアムのことはリスペクトしていますし、スカウティングもしました。その状態で、このような試合をしてはいけないと思います。20点(近く点差が)開いた時に、30点差、40点差と広げていかないと。今日(代表デビューの可能性があった高校生の渡邉)伶音も、出場させてあげられませんでしたし……悔しさが残る試合でした」
チームの戦い方についてはもちろん、将来を期待されるチームメイトのことを考えていたからこそ、冒頭で見せたような怒りを自分に向けていた。
吉井とは、そういう選手なのである。