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日ハム・五十幡亮汰はなぜ“ドラフト2位”指名だった?「あれだけの足があるのに…」 記憶に残るスカウト評 プレミア12で代表大抜擢「ホントの理由」
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byJIJI PRESS
posted2024/11/24 11:06
2020年ドラフト2位指名で日ハムに入団した五十幡亮汰。快足選手としてプレミア12日本代表でも活躍するが、当時のリアルスカウト評は…?
「だから、2位で何がなんでも足のある選手。それも、盗塁できるスピードと走塁センスのある選手。選択肢はそんなになかった。亜細亜の矢野か、獨協大の並木(秀尊、外野手、現・ヤクルト)か。あの翌年は、阪神の中野(拓夢)がルーキーで盗塁王になったんだけど、社会人(三菱自動車岡崎)の頃の中野はそんなに走ってないからね」
ハイレベルな東都六大学のリーグ戦で1年生からレギュラーで実戦経験を重ね、走塁のカンを磨いてきた五十幡選手が、総合評価で一枚も二枚も上。それが「日本ハム、五十幡亮汰・2位指名」につながったという。
その関係者の方は、こう付け加えてくれた。
「仮にレギュラーになれなかったとしても、肩も抜群に強いし二塁手だけじゃなく外野手も十分こなせる。五十幡みたいな選手が、チームのワンピースとして25人の中に1人いると、チームって強くなるんだよ」
そんな思い出ばなしを、日本ハム・大渕隆スカウト部長としていたら、「あっ、すごい場面を思い出した」という。
「立教とオープン戦をやった時ですよ。センターの定位置よりちょっと深いぐらいのフライで、二塁にいた五十幡がタッチアップして、そのまま三塁を回り込んで、ホームにすべり込んできた。もちろん、セーフですよ。あんなプレー、初めて見ました。あれ以降も、あそこまでのベースランニングのスピードと凄み、出会ったことないですね」
野球は「スラッガーを9人並べても勝てない」
11月21日、対アメリカ戦。
終盤8回、死球で出塁した五十幡亮汰選手、すかさず二盗を敢行すると、捕手の悪送球で三塁まで進塁。1番・桑原将志左翼手のセンター前で生還し、2番・小園海斗二塁手のダメ押し本塁打につなげてみせた。
なんだか、学んだような気がした。
やはり、野球は打線にスラッガーを9人並べてみても、勝てないんだなぁ。チームとは、組織とは……いろいろな個性と役割と得意ワザを持った「多色」の人間たちで構成されていると、いい事が、面白い事が、楽しい事がいろいろ起こる。
ピカピカ輝く金色の絵の具だけ25本持っていても、金色のベタ塗りしかできない。
25色の多色の絵の具を持っているからこそ、思い描いた景色を、自在に描けるというもののようである。