- #1
- #2
猛牛のささやきBACK NUMBER
オリックス・中嶋聡監督「電撃辞任」“その後”…選手たちは衝撃をどう受け止めたのか?「僕が引っ張っていきます」口にした中堅選手の思い
posted2024/11/12 11:02
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Hideki Sugiyama
4年ぶりの、日本シリーズのない秋。
舞洲にあるオリックスの球団施設では10月17日から秋季練習が行われていた。以前は日常だった光景が、今年はどこか違って見えた。
昨年まで3年間いた場所に、今年はいられなかった悔しさはもちろん皆抱えている。それだけでなく、突如一時代に終わりが来たことへの戸惑いがまだ漂っているようだった。
突然伝えられた指揮官の辞任
昨年までパ・リーグ3連覇していたオリックスは今年、63勝77敗3引き分けの5位に終わった。
今季最終戦となった10月6日の楽天戦後のミーティングで、中嶋聡監督はこう告げた。
「責任とります。来年、監督をやることはないです。今年で終わらせてもらいます」
「え?」
選手たちは頭を殴られたような衝撃を受けた。宗佑磨はこう振り返る。
「もう、びっくりしました。『責任をとって辞める』という言葉が印象的すぎて、そのあとの話はあまり覚えていません……」
中嶋監督だけに見えていたもの
3年前の2021年、就任1年目だった中嶋監督は、長らくBクラスに低迷し、2年連続最下位だったオリックスを、25年ぶりのリーグ優勝に導いた。監督の力でこれほどチームは変わるのかと衝撃を受けた。
貫いたのは、選手のコンディションを第一に考えること。リリーフ陣は基本的に3連投することなくやりくりした。
日替わり打線を組みながら勝利を掴んでいく戦いは“ナカジマジック”と言われることもあったが、一つ一つに、中嶋監督だけに見えている根拠があった。
並外れた観察力や記憶力、コミュニケーション力といったものがその根拠のもととなった。データだけではわからない過去の対戦時の情報を詳細に記憶していて、選手のその日のコンディションなど、無数の判断材料を合わせて当日のベストオーダーを組んだ。
宗佑磨が明かした「感謝」
二軍から昇格した選手を即先発で起用するなど旬の選手をうまく活かしながら、就任1年目は、高卒2年目だった紅林弘太郎や、二軍でくすぶっていた杉本裕太郎、二軍監督時代に外野手から三塁手への転向を勧めた宗など、見込んだ選手を忍耐強く起用し続けた。