- #1
- #2
猛牛のささやきBACK NUMBER
オリックス・中嶋聡監督「電撃辞任」“その後”…選手たちは衝撃をどう受け止めたのか?「僕が引っ張っていきます」口にした中堅選手の思い
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byHideki Sugiyama
posted2024/11/12 11:02
チームを三連覇に導いた中嶋監督。時に厳しく、時に温かい眼差しで選手たちを見守ってきた
何も言わなくても自分の役割を果たし、少々調子を崩しても自分で修正できる選手は、いい意味で“放置”されていた。中川自身、今年は怪我や不調のためそういう存在でいられなかったことを悔やむ。
「ほんまはたぶんそういう選手にならないといけないんですよ、この世界は。ほっといても、自分でやって、結果を残すぐらいじゃないと、生き残れないので」
岸田新監督が目指す「変化」
中嶋監督も、勝ちながら育成、競争とステップを踏んできたチームが次の段階に進むために、そんな成熟した選手が増えることを望んでいたのではないか。だが実際には甘えが出た部分があったのかもしれない。
中嶋監督のあとを受けて就任した岸田護新監督は、秋季練習初日にこう語った。
「選手に限らず、チーム全体が、中嶋さんという偉大な監督のもとで、頼り切っていたところもあったと思います。メディアでも“慣れ”とか“緩み”というところが取り上げられて、そこは当然よくなかったところ。でも新しくチームは変わっていくので。全員でもう一回同じ方向を向いてできるように、こっちは全力でやっていくので、ついてきてほしいという話を(選手に)させてもらいました」
「僕が引っ張っていきます」
選手にも“自分が”という思いが芽生えている。
来年入団11年目を迎える28歳の宗はこう意気込む。
「僕が引っ張っていきます。僕と頓宮(裕真)と(中川)圭太が。この世代で頑張ってやっていく。あと佐野(皓大)もですね。あいつは“カッコ佐野”ですけど(笑)。人についていくのが好きなので」
同学年の中川も「そんな感じです」と同意する。
「話は別にしていないですけど、そういう(引っ張っていくという)雰囲気は出ています。たぶん僕らの代が一番多いので。ピッチャーの(鈴木)博志もタジ(田嶋大樹)もそうですし。ちょうど(年齢的にも)真ん中ぐらいでもありますし」
この世代が揃って本領を発揮すれば、「てっぺん、狙えると思うんですけどね」と中川は静かに燃えている。
選手たちが自立へと進み始めた一方で、中嶋監督を支えてきたコーチ陣は進退をめぐり葛藤した。それでも、来季もオリックスを支えると決めたコーチの決断の理由とは−−。(後編へつづく)