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[柏原竜二が聞く]大学駅伝に新風は起きるのか。城西大の最新メソッド。
text by
林田順子Junko Hayashida
photograph byTakuya Sugiyama
posted2024/09/26 10:00
10台のトレッドミルが並び、すべてのデータはパソコンに集約される城西大の低酸素室
櫛部「継続性が大事なので、苦手な人は…」
櫛部 まず、個人差があります。平地で強い選手が、低酸素環境でも強いかというと、決してそうではなく、逆転現象が起きる場合があります。また、低酸素環境が苦手な選手は、血中酸素飽和度が下がりやすいですね。ただ、下がることは悪いことではないんです。
柏原 そうなんですか!? 昔は下がると危ないとしか言われませんでした。
櫛部 九電工のベナード・コエチ選手らがケニアの高地環境で400mのインターバル走をやったとき、練習後の飽和度は66でした。それだけ体内で酸素を利用してエネルギーを産生しているということです。だからうちでは心拍数も大事ですが、飽和度も重視しています。ただ、個人差があるので、他人と比べるのではなく、自分のデータを継続的に取ることが大事です。例えば、時速20kmで走ったときの心拍数と飽和度を記録しておくと、体調や状態が分かります。
柏原 練習内容にばらつきがあるなかでデータを取っていることも多いと思うのですが、一定にすることが大事なんですね。
櫛部 速度を固定化できるのがトレッドミルの良さで、成長度をきちんと把握することができます。あと安静時と最高時を知っておくのも大切です。例えば、低酸素室で最大酸素摂取量を高めるようなトレーニングの場合、慣れてくるとこれまで通りの負荷では不十分になります。選手の心拍数を常時モニタリングしながら、最大酸素摂取量が向上するような強度(心拍数95%前後)を適切に設定するようにしています。
柏原 僕はトレッドミルが苦手だったのですが、やってみたくなりますね。
櫛部 継続性が大事なので、苦手な人は動画を見ながらやるといいですよ。例えば、追い込むときは世界大会の1500mのラスト1周を流したり、(前回の箱根駅伝5区を走り、MVPに選ばれた)山本唯翔はそれこそ柏原さんが箱根の5区を走ったときの映像を流したりしていました。
柏原 厚底はどうお考えですか?
櫛部 やはり強度を正しく見極めないといけないと思っています。よく○%のエネルギーリターンって言いますよね。でも例えば薄底と厚底で同じ距離と速度で走ったら、見えている強度は同じでも、厚底によって○%身体に与えている刺激は低いということになる。そこを勘違いしてトレーニングを進めるべきではないかなと。
柏原 どうしても楽に、速く走れるというのが先行しがちですよね。
櫛部 だから最初は練習では薄底を推奨していたんですけど、そもそも今は売ってもいない(笑)。
柏原 確かに(笑)。選手から練習法について疑問を持たれることはありますか?
櫛部 メニューについてはよく聞かれます。ただ、私としてはメニュー自体よりも、目的が大事だと思っていて。例えば、最大酸素摂取量を上げるのが目的であれば練習方法は色々あって、私としては体が得られる効果が同じならばいい。