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[柏原竜二が聞く]大学駅伝に新風は起きるのか。城西大の最新メソッド。

posted2024/09/26 10:00

 
[柏原竜二が聞く]大学駅伝に新風は起きるのか。城西大の最新メソッド。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

10台のトレッドミルが並び、すべてのデータはパソコンに集約される城西大の低酸素室

text by

林田順子

林田順子Junko Hayashida

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Takuya Sugiyama

昨季は三大駅伝全てでチーム最高位を更新、個人種目でも好成績を残すなど、進化を見せた城西大学。「僕もその練習法が気になっていました」と語る柏原竜二が、櫛部静二監督を訪ねた。

柏原 まず、僕らの時代は「距離を大事にしなさい」と言われたのですが、最近の城西大は量よりもスピードを重視しているように見えます。実際どうですか?

櫛部 色々なことが変わってきているので、一概には言えないのですが、確かに量よりもスピードを重視しています。

柏原 比重を変えているんですか?

櫛部 いえ、長距離、中間、短い距離を順にやるというのは、変えていませんが、スピード練習の強度を高めているので、必然的にどこか削らなきゃいけない。なので、ボリュームを少し抑えています。

柏原 日本の陸上界は基本的に経験値で練習のプランニングをしてきた文化だと思うのですが、櫛部さんはなぜ大胆に変えたのでしょうか?

櫛部 確かに君原健二さんの時代から日本マラソン界の黄金時代が続いて、そのやり方を踏襲した、量を重んじる指導法が続いていました。ただ、私は選手時代からずっと、このままだと世界との差は広がっていくのではと疑問を感じていました。また20年ほど前から、他競技ではスポーツ科学の見地から強度の重要性についての論文が出てきて。そこでは持久系スポーツにおいて、量だけでは頭打ちで、強度を上げることの重要性が説かれているんです。昔のことを全て否定するわけではないけれど、理論上のエビデンスが出てきたことで、やはり強度を高めないといけないと思ったんです。

柏原 インプットは何から得るんですか?

櫛部 スポーツ科学の論文ですね。自転車や水泳、スケートなどからヒントを得て、これを陸上に落とし込むとどうなるんだろうと考えたりしています。

柏原 今回、低酸素室の規模の大きさに驚きました。データも取られていましたが、強い選手の特徴はありますか?

櫛部 分かりやすいのは、ケニア人留学生。彼らは強度の高い練習後、心拍数が下がるのが非常に早いんですね。だからレース途中で、スローペースになると、すぐに回復できる。また、酸化能力が高いため、少ない酸素でもエネルギーに変換できるんです。

柏原 日本でも菅平高原などで高地トレーニングをしますが、僕はあまり効果を実感できなかったんです。

櫛部 菅平のトレーニングエリアの多くは標高1200m付近で、一番高いところでも標高1650m。一方、世界でスイートスポットと言われているのは、2000~2500mで酸素濃度は16.6~15.7%、標高0mでは約20.8%です。酸素が5%下がると体に大きく影響を与えると言われているので、標高が足りないんです。ただ、やらないよりはやったほうがいいです。

柏原 他には何が分かるのでしょうか?

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