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論点は“不起訴”ではなく…「伊東純也の代表復帰」なぜこのタイミングだった?「彼のために招集しなかった」森保監督の過去発言から読む判断基準
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byEtsuo Hara/Getty Images
posted2024/09/01 17:00
アジアカップ以来、7カ月ぶりの日本代表復帰となった伊東純也。森保一監督はいかにして招集の判断に至ったのか
もちろん、チーム戦術やゲーム戦術の構築に幅が出ることも期待される。さらには、最終予選で対戦する相手の情報収集でも力を発揮してくれるだろう。10月に対戦が控えるオーストラリアには、ブンデスリーガでプレーするジャクソン・アーバインやコナー・メトカーフ、今夏にバイエルン・ミュンヘン入りした18歳の俊英ネストリ・イランクンダらが招集されている。日本代表には分析を担うテクニカルスタッフがいるが、長谷部コーチが持つ鮮度が高い情報も、チームの助けとなっていくはずだ。
長谷部コーチの就任は“日本代表監督”への布石なのか
長谷部コーチの就任を、もう少し広い視野でとらえてみる。「将来的な代表監督の候補」に挙がった、と考えてもいいのだろう。
森保監督は2018年4月のヴァイッド・ハリルホジッチ元監督の更迭とともに、U-21日本代表監督との兼任で日本代表スタッフに入閣した。ハリルホジッチ監督の後任となった西野朗監督のもとでロシアW杯を経験し、大会後に監督に指名された。スタッフからの内部昇格は、新体制への移行をスムーズに進める有効な手立てとなる。
これまでW杯で優勝した国は、すべて自国の監督に率いられている。日本が本気で優勝を目指すなら、森保監督にチームを託していくか、新たな日本人監督を据えるべきなのだろう。このタイミングでスタッフ入りした長谷部コーチが、将来的な監督候補のひとりとして考えられる理由だ。
他方、フランクフルトU-21で指導者としてのキャリアをスタートさせた長谷部コーチは、「ドイツで(欧州で)指導者としてステップアップしてほしい」との期待を寄せられる存在だ。代表監督の立場で日本代表に関わるのはもう少し後でいい、という考えも成り立つ。
彼がドイツで記す足跡は、日本人指導者の可能性を拡げることにもなる。北中米W杯以降については、長谷部コーチの意思が尊重されるべきだろう。
9月に行なわれる最終予選の初戦は、日本にとって鬼門となっている。前回はオマーンに、前々回はUAEに苦杯をなめさせられた。5日に対戦する中国の監督は、ブランコ・イバンコビッチだ。前回予選でオマーンを率い、日本を丸裸にして勝点3を持ち帰った智将である。
攻撃陣に主力選手が復帰し、かつてのキャプテンがコーチとして還ってきた。試合前の時点ではプラス要素は多いが、想定外の出来事が襲い掛かるのが最終予選である。しっかりと地力を示したうえで、白星発進が求められる。