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「ナカタ、イナモトとオノは別格だった」日本サッカー“変わらぬ弱点と新たな課題”「ハセベが将来…最適任だ」トルシエが本音で提言
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byTakuya Sugiyama
posted2024/08/26 17:04
ドイツでの指導者生活に入った長谷部誠。日本サッカーの今後のため、トルシエも大いに期待を寄せている
「日韓W杯の後で選手たちは海外のクラブに移籍した。その結果、今では代表の80%が海外組になり、監督やスタッフは徐々に日本人が占めるようになった。日本人の系譜は、岡田武史から西野朗、森保一と続いたが、彼らは海外でのプレー経験を持たない指導者たちだった。
よくバランスが取れていると私は思う。海外の経験を選手がもたらし、日本人スタッフは足りないものを補完する。文化的な要素の補完だ。岡田も西野も森保も、ヨーロッパではなく国内で豊富な経験を培ったに過ぎない。両者が補完しながらチームを構築するコンセプトはとてもよく機能している。彼らのもと、日本はいずれもW杯でベスト16に進むことができたからだ」
現状は長谷部が将来に向けての最適任者だ
――そういえるかも知れません。
「ここまでは問題ない。問題はこれからさらにプラスアルファをもたらすにはどうすればいいかだ。埋めなければいけないのは、欠けているもろもろのディテールだ。だから第三段階としては国際経験を……既存の指導者のなかに、国際経験のあるものはいるのか。私にはわからないが、例えば長谷部誠のような人材が指導者になったときに、日本国内でしか経験のない指導者にはできない作業――ディテールを埋めることができるのだろう。
日本の今後を考えるときに、このレベルの考慮をしていくべきだ。海外組の選手たちと、ヨーロッパでの経験を持つ指導者。彼らが今の日本に欠けているディテールをチームにもたらす。その点では現状は長谷部が、将来に向けての最適任者であるように思える。
進化の過程は明らかだろう。2002年はスタッフが外国人で選手は国内組中心。その後、2010年以降はスタッフが日本人で選手はヨーロッパ組が台頭した。そして今後は、ヨーロッパの経験を持つスタッフとヨーロッパ組の選手たち。この組み合わせが、これからの日本に小さなプラスアルファをもたらしていくことを考えていくべきだ。現実に可能かどうかは別にして、今後の方向性として考えていくべきことだ」
パリ五輪、日本は力のすべてを…そこに批判はない
――例えば大岩剛監督は、この大会で素晴らしい仕事をしましたが、彼もまた選手としての国際経験がありません。
「この五輪代表自体が、50%が国内組だった。そうだろう」
――もう少し多いです(註:実際にはバックアップメンバーを含めた22人中、海外組は7人のみで15人が国内組だった)。