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「挑発的だが、政策は日本と比較できる」スペインでもフランスでもなく…トルシエが“W杯4強→パリ五輪銅メダル”モロッコに熱視線のワケ

posted2024/08/26 17:03

 
「挑発的だが、政策は日本と比較できる」スペインでもフランスでもなく…トルシエが“W杯4強→パリ五輪銅メダル”モロッコに熱視線のワケ<Number Web> photograph by Takuya Nakachi/JMPA

パリ五輪男子サッカー、スペインvs日本。個の力について語ったトルシエが、銅メダルのモロッコから見出した日本との共通点とは

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田村修一

田村修一Shuichi Tamura

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Takuya Nakachi/JMPA

 フィリップ・トルシエインタビューの第2回である。

 話し始めたテーマはアフリカの現状――マグレブ諸国と西アフリカ諸国の違いから、日本の評価、今後の展望へと移っていく。パリ五輪サッカー男子で決勝を戦ったスペイン、フランスだけでなく、銅メダルのモロッコへの熱い視線は、アジア・ヨーロッパ・アフリカという3大陸のサッカーへの造詣の深さ、全体の枠組みを意識しながら構築していく論理の整合性を感じる。トルシエの言葉には、耳を傾けるだけの価値がある。<全3回の2回目>

スペイン戦、得点チャンス自体は何度かあったんだ

――スペイン戦では細谷真大のゴールネットを揺らしたシュートがVARによってオフサイドで取り消しになる不運もありました。ただし、それ以外に決定機がなかったかと言われれば……。

「そうだ。得点チャンスが幾度となく訪れたが、その度に何かを欠いて得点には至らなかった。だがすべての要素は揃っていた。日本は個の力さえ備えていれば力を発揮できるすべての要素を整えた。しかし選手たちの個の力は、それに見合うだけの重さをまだ持ってはいなかった。それが違いであり、違いは個の力の有無から生じていた」

――銅メダルを獲得したモロッコや4位のエジプトと比べても、違いは明らかでした。

「モロッコを見たとき、組織と個の比率は50:50だった。組織が50%で個の力が50%だ。彼らの個にはキャラクターがあった。もちろん能力があるのが前提だが、その上に強い個性があった。また彼らは抜け目のなさも発揮したし、相手を挑発もした。メンタリティが日本の選手たちとは異なっていた。そういう部分も含めてモロッコの選手は個人主義であったしエジプトも同様だった。ちなみにエジプトは、選手の80%以上が地元クラブに所属していて、国外でプレーする選手の比率は極めて低い。それでも彼らはずるがしこく挑発的だった」

――彼らのパーソナリティもまた、日本のそれとは大きく異なります。

「繰り返すが個の力を語るとき、まず第一がサッカーの能力であるのは間違いないが、同様に挑発するキャラクターも重視される。その点でマグレブ諸国――モロッコやエジプトは確固としたアイデンティティを示した。選手それぞれに明確な個の力を感じた。この五輪で目立ったのはモロッコやエジプトといったマグレブ諸国の活躍であり、とりわけモロッコは2022年のW杯以降、彼らの強いアイデンティティと進化をこの大会でも感じた」

2030年W杯開催国のモロッコが進境著しいワケ

――躍進は目覚ましいです。

【次ページ】 モロッコの国内政策は日本のそれと比較できる

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