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甲子園の風BACK NUMBER
4人がプロ入り…大阪桐蔭・最強世代を追い詰めた“偏差値68”府立進学校の監督が“まさかの異動”で「インフルエンサー兼バスケ部顧問」に転身のナゼ
posted2024/08/18 11:01
text by
清水岳志Takeshi Shimizu
photograph by
Takeshi Shimizu
2018年根尾昂、藤原恭大らを擁し「最強世代」と言われた大阪桐蔭を9回2アウトの瞬間まで追い詰めた府立寝屋川高校。その名物監督だった達大輔だが、当時からSNSでも多くのフォロワーを誇る「野球インフルエンサー」でもあった。その後は不祥事もあり、同校から異動になり都島工業高校へと赴任した。
そんな達のプロフェッショナルな部分=SNSを都島工業野球部監督の小宅健太郎はやっていなかった。
「例えば、何月何日、きょうは練習試合をしました、と発信すると、この風景はどことやってる、とか知り合いの先生同士なら情報が行き来する可能性もある。そうなったら責任あるなと思って」
正直、迷っている最中なのだという。
野球部員は3年生15人、2年生15人、1年生は未経験者2人を含めて10人が入部した。府内の工業系では断トツに多く、府立全体でも大所帯で恵まれている。
「ここは学校のブランドがあって、大阪府の北や南のはずれからも生徒が通学してきます。でも定員割れしてる学科があって、そこを受ければ合格する。クラブの加入率も高い。部活をやりやすい環境なんです」
達が都島工は部員を集めやすいという。いい選手が集まれば強くなる、というのだ。小宅も問い合わせがあったらセールスポイントを伝える。
「部員が多いので紅白戦ができます。いい就職ができる、進学率も高い。お勧めですと言ってます」
スカウトのため「中学校回り」をしないのは…?
ただあえて、部員集めのために中学校回りをしないという。そこには都島工の特殊な事情がある。工業高校なので、生徒に声をかけてきてもらったとしても、興味のない建築・電気の勉強をしないといけない、ということになりかねないからだ。春シーズンの練習試合で3本塁打した選手がいる。彼は建築科の生徒で、将来は大工になりたいから入学したのだという。そこにたまたま野球部があったので入ってきた。そういう普通の部活なのだ。
小宅の監督人生は2年目に入ったばかり。そこにベテラン監督経験者の達のエッセンスが加わった。
「今年から野球部の顧問にも入ってもらいました。技術指導は全くされないですが、何かあったときに対応してもらえる。相手チームの視察にも一緒にいっていただけますし」
実は達に会いに全国からたくさんの野球関係者が毎日のように訪ねてくる。
「隣の席にいるので、僕が間違いなく一番、親しい。幸せです」
そう言って小宅は笑う。春から夏にかけて投手陣全体の底上げができたそうだ。シートバッティングなどマシンではなくてピッチャーが実際に投げる実戦形式の練習を増やした。するとバッターに対して、相手を観察して考えていろんな投球ができるようになったのだ。「ピッチャー、放らさないの?」という達の一言があって、小宅がひらめいたのだという。