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甲子園の風BACK NUMBER
根尾昂、藤原恭大…大阪桐蔭“黄金世代”を「最も追い詰めた」“偏差値68”府立高監督がなぜ野球インフルエンサーに?「学校に迷惑をかけましたし…」
posted2024/08/18 11:00
text by
清水岳志Takeshi Shimizu
photograph by
Hideki Sugiyama
「校長が話したいことがあると仰っていて、校長室に来てもらえますか」
体育教官室で野球部の監督と話していたら、達大輔先生がそう言って入ってきた。達は身振り手振りがはっきりしていて、声が大きく物言いも明確な46歳の体育教師だ。応対も丁寧で人懐っこい。
そんな一見すると普通の公立高校の教師に興味を持ったのは、達のツイッター(現X)が高校野球界では有名で筆者のタイムラインにも引っかかったからだ。4年ほど前のことだったと思う。
そこから遡って2018年。この年の高校野球は大阪桐蔭が甲子園で春夏連覇を果たす。そう、根尾昂(中日)、藤原恭大(ロッテ)、柿木蓮(日ハム)、横川凱(巨人)というプロ選手を輩出し、史上最強チームとも言われた。
なぜ府立の進学校が「黄金世代」を追い詰められた?
このチームを黒星寸前まで追い詰めた府立高校があった。センバツで優勝、その約1か月後の大阪春季大会の準々決勝、大阪桐蔭は寝屋川に9回裏2死まで3対4とリードされていた(そこから逆転勝ち)。
寝屋川の創立は1909年。毎年、京大、阪大、神戸大を含め国公立大に100人前後が進む府立の進学校だ。学業優先、グラウンドも狭く部活には不向きな普通の高校だ。
ただ、1956年の春と57年の春夏の3回、甲子園に出場している。57年は春も夏も1勝を挙げて、いずれも2回戦で王貞治投手のいた早実と対戦していて0対1で敗れている。夏には王投手がノーヒットノーランを達成した試合で校名が挙がることがある。
過去にそんな歴史があったとしても、このご時世で大阪桐蔭に勝ちそうになったから、6年前、大阪のファンには驚きがあった。
その時の寝屋川の監督をしていたのが達だった。寝屋川の卒業生で母校の監督9年目。多彩な走塁が持ち味のチームを作っていた。
達はその2年後からツイッターを始めて、高校野球ファンや関係者からフォローされるようになっていく。
「きっかけは部員集めの広報です。私立に立ち向かうには素材のいい選手が来てくれること。どうやって部員を集めるか。中学生の大会を見に行ったりもしますが、SNSを使うことは近道の一つです」
立ち上げたときの自己紹介に「本気で甲子園を狙う」と添えた。コアなファンは府立の進学校監督がそうぶち上げたから、気になるというものだ。