夏の大阪大会は初戦突破して2回戦で私学の強豪に敗れた。0対6というスコアはここ数年ではかなりの善戦だったことは言うまでもない。達も対戦校のデータを監督仲間から取り寄せて、分析したそうだ。

「達先生に都島工に来ていただいてよかった。プラスしかないです。私は3年の担任を持っていて、この子らを出したら転任かなと思うんですが、残りたいなと思ってる理由の一つは達先生との時間があるからです」

　練習試合に行くと、「達先生はどうしてるの」と常に尋ねられる。しかし都島工の野球部監督は小宅だ。

「達先生の野球は達先生しかできない。僕の疑問を達先生にぶつけて、アドバイスをもらって、僕の野球をやっていく」

府立野球部の名物監督がまさかの「バスケ部顧問」

　達はバスケット部の顧問でもある。今はむしろバスケのほうが野球より比重が大きい。そのバスケットの監督が下村淳基（29歳）体育科教諭だ。

「野球で影響力を持ってこられた方。種目は違えど、いろんなことを教えていただいています」

都島工業高でバスケ部監督を務める29歳の下村（中央）／学校提供

　日々、学びが多いという。

　下村は阪南大高、びわこ成蹊スポーツ大でポイントガードのレギュラーで活躍したが、インターハイ、インカレなど大きな大会の出場はない。大阪市の教員試験を受けて合格、新卒で都島工に赴任して7年目になる。

　阪南大高は高校バスケ界の強豪だ。練習を見学した時にここでやりたい、と思ったという。監督の森本正先生は自身が東住吉工業で全国ベスト4になった実績がある。全国で森本の名は知られた存在でもある。

　その教えは理論的だった。勝つべくして上位に進出していく。下村は将来、この人のようになりたい、と教師になることを決めた。

バスケ部を指導する下村。顧問の達のアドバイスも活かすという／学校提供

　大阪のバスケ事情も野球同様に私学が圧倒的に強く、選手も集まる。上手い5人を私学の25校がとると125人で、次に公立の体育科がある高校がとって、みやこうに来るのはその下の普通の子になってしまう。

　下村は過去6年で2度、部員をリクルートせずにベスト16の成績を残した。ただ、それ以上を目指すには質の高い選手が必要だった。

　府内の中学に文書を送ったこともあるが、なかなか結びつかない。勧誘にSNSをどう生かすか。下村はここ何年か悩んできたが、達が背中を押してくれた。

「優秀な選手が来てくれることも部を強くする方法の一つ。こっちから動くことも大事、SNSは効果がある」

　昨年の7月からXを始めて、それは今やフォロワーが1200人を超えてますます増殖中だ。NBAなども含めたいろんな試合のワンシーンなどについて解説した内容で、達が野球についてつぶやく内容と似ていて、関係者には興味を持たれているはずだ。

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