オリンピックPRESSBACK NUMBER
スケボー女子パーク「日本人母」メダル独占の陰で…東京五輪王者が“まさかの予選落ち”のナゼ 四十住さくら(22歳)が直面した「新時代の波」
text by
吉田佳央Yoshio Yoshida
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2024/08/08 11:35
まさかの予選落ちに終わった「東京五輪の金メダリスト」四十住さくら(22歳)。昨年負ったケガの影響も大きかったが…
「東京(五輪)でやった技をやっても(今は)準決勝で落ちてしまう。身体を回転させる技などを予選から出さないと上がれない」と本番に臨み、宣言通りにランの最後にバックサイド360を成功させるなど見せ場は作ったが、点数が伸びきらず、10位で予選敗退となってしまった。
予選の彼女のランを見て「あれっ、思ったより点数が低いな」と思った人がいるかもしれないが、それ以上に女子パークの技術進化のスピードが目覚ましいということが言える。
「パークスタイル」種目の歴史の浅さ
そもそもパークスタイルという種目の歴史は、期限を辿ると70年代に干ばつによって空いたすり鉢状のプールになるので古いのだが、競技としてはストリート以上に浅く、彼女はどれも初代女王に輝いている。だが、それは裏を返せば、四十住がコンテストに出始めた頃はパークスタイルのコンテストがほとんど存在していなかったことを意味する。
実際に筆者が彼女を初めて見たのは、2016年に韓国で開催された日本スケートボード協会によるASIAN OPENというストリートのコンテストだった。
その後も2017年の全日本アマチュア選手権などストリート種目で姿を見かけていた。もちろんそこでは数年後に金メダリストとなる西矢椛、銅メダリストとなる中山楓奈、世界選手権を制すことになる織田夢海などを抑えて優勝しているので、素質は十分にあったのだが、今思うと彼女が10代前半の頃にパークスタイルのコンテストがほとんど存在していなかったことがディスアドバンテージとなっているように感じるのだ。
そもそも彼女が東京五輪を含む世界大会のほとんどで初代女王になれたのは、リップトリックというコースの縁を巧みに使う繊細な技術面が秀でていたからだ。もともと高く跳んだり、回ったりするのは得意ではない。だがそれは育ってきた環境を考えると致し方ないといったところだろう。
それでも類稀な努力でノーハンドの540(※手でボードを掴まずに空中で1回転半する大技。手で掴まずにボードを回転させるにはより繊細な技術が必要になる)等はマスターしたものの、その後に彗星の如く現れた岡本碧優と比べると、トリックの高さにどうしても差が出てしまうのは当然だった。