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スケボー女子パーク「日本人母」メダル独占の陰で…東京五輪王者が“まさかの予選落ち”のナゼ 四十住さくら(22歳)が直面した「新時代の波」
text by
吉田佳央Yoshio Yoshida
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2024/08/08 11:35
まさかの予選落ちに終わった「東京五輪の金メダリスト」四十住さくら(22歳)。昨年負ったケガの影響も大きかったが…
東京オリンピックを境に訪れた「新時代」
筆者は東京オリンピックを境に時代が変わったと思っている。
四十住達の20代前半の選手と、パリでメダリストとなった10代半ばの選手では根本が全く違うのだ。誤解を恐れずにいうなら、今のように立派なスケートパークやコンテストシーン、指導方法が確立される前の世代が気合いだけでひたすら練習しても、それでは絶対に限界が来てしまうだろう。
そもそもスケートボードを始めたのが小6(11歳)の四十住と、6~7歳の頃に始めた時点で環境がある程度整っており、どっしりとした根っこが張れている今の10代半ばの選手達を比べること自体が酷なのではないか。
そこから3年が経過した今、積み重ねが結果となって現れた。
これが、彼女が予選敗退となってしまった理由の本質ではないかと分析する。
今大会の中継を見て、解説をしっかり聞いているとわかるかもしれないが、採点傾向として「オリジナリティやコースの使い方」に重きが置かれる傾向にある。横に広く、全てが詰め込まれているコース設計で、セクション(障害物)にそれほど高さはなくスピードを保つのが難しい。なかなか直線的には使えず、入りづらいアプローチがいくつもある。そういった形でスケートパーク自体も徐々に進化しているのだ。
そこをいかに、例えば開のように、流れるように使いこなすことができるのか。また、トルーのようにコーピングというコースの縁を越えて高く跳ぶことができるか。時代の進化の中でそういった部分が重要視されるようになってしまった現在では、四十住のような繊細なトリックを武器とする選手では太刀打ちできなくなってしまったようにも感じる。
これが「世代交代」というものなのだろうか。
ただ、彼女が女子パークシーン全体のレベルアップに多大な貢献をしたことは揺るぎない事実である。「レジェンド」と言っても過言ではないだろう。そんな彼女であれば、そういった時代に抗うような滑りにも期待してしまいたくなる。
時代の狭間を先頭に立って、何度も潜り抜けてきた、唯一の選手なのだから。