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「日本選手に感動したわ」パリ五輪スタッフが絶賛、敏腕通訳は涙…あの“論破王”もアツくなった日本フェンシング「なぜ現地で感動を呼んだ?」
posted2024/08/07 11:30
text by
齋藤裕Yu Saito
photograph by
Asami Enomoto/JMPA
普段、冷静な人間が感情を出した時。その瞬間がやけに印象に残る。それが取材を仕切るスタッフだったら、冷静に何でも訳す通訳だったら、「論破」でお馴染みのひろゆきだったら……。今回のパリ五輪、フェンシングの話だ。
ボランティアスタッフが感動「なぜ日本の選手は…」
銅メダルを獲得した女子フルーレ団体。メダルに貢献した東晟良は、団体戦前の個人戦では初戦敗退に終わった。自身も期待していた分、不発に終わり、涙が溢れた。記者たちの問いに笑みを見せながらもその目は潤んでいた。
するとさきほどまで、記者たちを取り仕切っていたボランティアの女性スタッフ・湯天星さんもつられて泣き出す。選手の肩に手を乗せ、メッセージを伝え励ますスタッフ。一体なぜ……?
本人に聞くと、理由についてこう語ってくれた。
「負けても記者の問いかけを断ることなく、そして落ち込んでばかりでもなく毅然とした態度で受け答えをしていて、感動したわ」
中国にルーツがあり、現在はアメリカのワシントン州在住の湯さん。フェンシングは全く知らなかったという彼女は続けてこう語る。
「なんで日本人の女子選手は、悔しい経験をしたのに切り替えてちゃんと受け答えをしているの? 他の国の選手は取材を断っていたりしたわ。でも日本人選手は負けたときもちゃんと答えていた。ただ、その受け答えも負けてヘラヘラしているのとも違う。負けは負けと受け止めた上で、胸を張って語っている。どうしてなの?」
日本の女子フルーレ団体は2018年にコーチに就任したフランス人のフランク・ボアダンから「君たちは、かわいいパンダだと他の国から思われている」と危機感を煽られ、他国への劣等意識を取り除き、タイガーのように猛々しく戦うことを教えられた。それまでは「敗れれば泣いてばかりいて、怖さがなかった」(ボアダンコーチ)という日本の選手たち。その振る舞いも凛々しくなっていった。今回の団体戦でも選手たちの得点後に相手を威圧するような叫び声をあげていた。