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ラグビーリーグワン“禁断の移籍”はなぜ起こった? 代表候補が「絶対的存在」のいる他チームへ…「W杯に出るために何が必要かを考えた」 

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大友信彦

大友信彦Nobuhiko Otomo

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photograph byNobuhiko Otomo

posted2024/07/19 06:00

ラグビーリーグワン“禁断の移籍”はなぜ起こった? 代表候補が「絶対的存在」のいる他チームへ…「W杯に出るために何が必要かを考えた」<Number Web> photograph by Nobuhiko Otomo

トヨタからサントリーへ移籍したSHの福田健太。トップチーム同士、しかも同ポジションに絶対的な選手がいるチームへの移籍は異例だが…

 成長のため、あえて環境を変えよう。自分にストレスをかけよう――そう思った福田は、移籍希望の意思を代理人に伝えた。そこにいち早く反応したのがサンゴリアスだった。サンゴリアスの田中澄憲監督は明大で主将を務めたときの監督であり恩師と呼ぶべき存在で、福田も学生時代にサンゴリアスへは何度か出稽古に行き、チームカラーにも接していた。

「サンゴリアスはチーム内の競争は激しいけれど、外国人頼みではなく、日本人選手の能力を大切にした上で、良い化学反応を起こしてレベルアップを図るチームカルチャーがあると感じていました。僕がそこへ行ったとしても、ポジションが約束されているわけじゃない。流さんだけじゃなく良いSHもいっぱいいるけれど、そこで競争すればまた成長できると思いました」

 その時点で、サンゴリアスのもうひとりの日本代表SH齋藤直人の退団も、フランスへの挑戦も決まっていなかった。福田のもとには複数のチームからオファーがあり、最終的に2チームと面談をした。トヨタからも慰留されたが、熟慮した上で、福田はサンゴリアス入団を決めた。

 昨年のワールドカップを経験したSO松田力也もワイルドナイツを退団してヴェルブリッツを新天地に選んだ。示し合わせたわけではないが、昨年のワールドカップを経験したHB団のうち3人が、成長のために居心地の良い古巣を離れ、環境を変えることを選択した。彼らの行動は偶然ではなく、日本ラグビーが進化していく過程の必然だったように思える。

「サンゴリアスが掲げている『アグレッシブ・アタッキングラグビー』は日本代表が目指す『超速ラグビー』に近いと思うんです。ここで競争してジャージーを掴み取ることは、2027年のワールドカップが近づいてくることだと思っています」

「1日も無駄にせずに過ごしたいです」

 現在はまだ3月のスピアーズ戦で負った肉離れのリハビリ中。本格的な復帰は8月末の見込み。その間、エディージャパンの1年目、SHには齋藤のほか藤原忍(25=スピアーズ)や小山大輝(29=ワイルドナイツ)ら新顔が重用されて走り出している。27歳の福田は乗り遅れた形にみえる。

「ケガが完治した頃にもしも代表から呼んでもらえたらもちろん全力を尽くします。このオフに呼ばれなくても、その現実をポジティブに受け入れて、ここで『超速ラグビー』への適応力を身につけられるように取り組んで、次のアピールチャンスに備えます」

 そう言うと、福田は深く息を吸って、付け加えた。

「1日も無駄にせずに過ごしたいです」

 新しい環境は、27歳のSHをどう成長させるか。望んだ未来は近づくだろうか。

 約束されていない挑戦が始まった。

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