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ラグビーリーグワン“禁断の移籍”はなぜ起こった? 代表候補が「絶対的存在」のいる他チームへ…「W杯に出るために何が必要かを考えた」
posted2024/07/19 06:00
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph by
Nobuhiko Otomo
プロ野球ではオフシーズンの移籍市場を「ストーブリーグ」と呼ぶ。それになぞらえればラグビーのオフシーズンはさしずめ「クーラーリーグ」あるいは「エアコンリーグ」とでも呼ぶべきか。ともあれ、数年前は考えられなかったほど、現在のラグビー界では移籍が活発化している。特に今季は日本代表クラスのビッグネームの移籍が目立つ。
リーグワン2023-2024の終了後に発表され、ファンを驚かせたのが、昨年のワールドカップに日本代表で出場したSO松田力也(30)の埼玉ワイルドナイツからの、SH齋藤直人(26)の東京サンゴリアスからの、そしてSH福田健太(27)のトヨタヴェルブリッツからの退団だ。生え抜き信仰が強い日本のスポーツ界でもラグビーはプロ化が始まって日が浅く、いまだ移籍が活発ではなかった。だが時代は変わろうとしている。
列島が猛暑に包まれた7月4日、福田健太の姿は東京都府中市のサンゴリアスクラブハウスにあった。
福田は茗渓学園から明大に進み、4年時は主将として明大を22シーズンぶりの大学選手権優勝に導き、2019年にトヨタヴェルブリッツに入団。3年目の2021-2022シーズンから頭角を現し、2023年に日本代表入りしてワールドカップに出場。そして5年目となる2023-2024シーズンを終えたところでヴェルブリッツを退団し、6月19日にサンゴリアスへの加入が発表されていた。この日は新しいチームでのメディカルチェックが行われたのだった。
トップチーム同士…「禁断の移籍」決断のワケは?
「移籍を決めたのは、去年、日本代表を経験したからですね。それがなかったら決断していなかったです」
移籍決断の理由を尋ねると、福田は快活な口調で答えた。
「それまでは『日本代表を目指す』と口にするほどの自信もなかったし、自分には桜のジャージーは遠いと思っていたんです。でも、実際に呼んでもらって、ジャパンを経験したら、思っていた以上に自分の成長を感じることができた」
日本代表のジャージーを着て多くの試合でプレーしたわけではなかった。ワールドカップに向けた国内での5連戦、イタリアとのウォームアップ試合では出番なし。ワールドカップ本番では3戦目のサモア戦で初めてリザーブ入り。初キャップをワールドカップで獲得するという得がたい経験を積んだが、出場時間は試合のラスト5分だけ。「活躍した」と言えるほどのパフォーマンスは見せられなかった。