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ラグビーリーグワン“禁断の移籍”はなぜ起こった? 代表候補が「絶対的存在」のいる他チームへ…「W杯に出るために何が必要かを考えた」 

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大友信彦

大友信彦Nobuhiko Otomo

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photograph byNobuhiko Otomo

posted2024/07/19 06:00

ラグビーリーグワン“禁断の移籍”はなぜ起こった? 代表候補が「絶対的存在」のいる他チームへ…「W杯に出るために何が必要かを考えた」<Number Web> photograph by Nobuhiko Otomo

トヨタからサントリーへ移籍したSHの福田健太。トップチーム同士、しかも同ポジションに絶対的な選手がいるチームへの移籍は異例だが…

 それでも、福田自身は成長を実感していたという。

「一番感じたのはトヨタに帰ってからですね。それまでとは全然違う、余裕を持って、周りを見渡してプレーができるようになっていたんです。以前はその場その場でのプレーに集中しすぎて、ひとつひとつの場面で焦りまくっていたんですが、余裕を持って、視野を広く持ってゲームを組み立てられるようになっていたんです。『オレ、成長してるな』と実感しました」

 だが、ヴェルブリッツでの出場機会は限られていた。ヴェルブリッツのSHには昨季、オールブラックスで125キャップの英雄アーロン・スミスが加入。同じくオールブラックスから1年限定でやってきたボーデン・バレットとのハーフバックスのペアでチームをリードした。福田は開幕前に膝を負傷、第5節のライナーズ戦から復帰したが、第9節のスピアーズ戦で腿の筋挫傷(肉離れ)を負いリタイア。先発はわずか1試合、出場時間は5試合124分。前々季の先発10、16試合788分から大幅に減少した。

「ケガをしてしまったのは自分に非があるのですが、パフォーマンスが良くても出場機会が限られていることにもどかしさはありました。もちろん、アーロンと一緒に練習することで成長できることもあるのですが」

 パスの技術もアーロンは惜しみなく教えてくれた。試合日に雨の予報が出ると、アーロンは練習終了後に石鹸水でボールを濡らし、滑りやすくしてパスやキャッチのエキストラ練習に自主的に取り組んでいた。

「リーグワンのレベルならそれくらいやっている選手は珍しくないと思うけど、オールブラックスで125キャップのスーパースターもそんな小さな準備を怠らずにやっているんだな、一流の選手は細かいことも一流なんだなと思いました」

「27年のワールドカップ出場に何が必要なのか」

 学ぶことは多かった。だが福田には別の思いもあった。

「僕ももう22~23歳の選手じゃないんで、アーロンと一緒に練習して2~3年かけて学ぶよりも、27年のワールドカップに出るために今何が自分に必要なのか、ということを考えました」

 福田は昨年のワールドカップに向けた日本代表活動期間に自分が学んだことを冷静に反芻した。振り返ると、日本代表合宿の中で、流大とともに過ごした時間が有意義だったことが改めて分かった。

「流さんは、僕が持っていない武器をたくさん持っているんです。リザーブから入ってゲームを修正するチカラ、チームにかける言葉の使い方、キックの使い方……それはサンゴリアスとの試合でいつも感じていたことです。

 SOからのキックならパスでいったんワンクッション入るけど、サンゴリアスではSHがすぐに蹴ることが多い。しかも流さんは右足と左足の両方で蹴れるから、ディフェンスしにくい。日本代表で一緒に練習して競い合うことで、よりそのスゴさを実感できました。それを僕も身につけたいと思った」

【次ページ】 「成長するには環境の変化が必要」

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