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ラグビー経験わずか2年の17歳で日本代表候補も…W杯出場経験ナシ “イングランド戦で代表復帰”「消えた天才」山沢拓也(29歳)の魅力とは?
posted2024/06/24 11:10
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph by
Asami Enomoto
試合開始を控えてのメンバー紹介。山沢拓也の名前がアナウンスされると、国立競技場の4万4000観衆からどよめきと歓声が沸き起こった。
歓声には「え? ホントに?」という驚きのニュアンスも含まれていた。それも無理はない。山沢のメンバー入りが決まったのは試合が始まる僅か1時間ほど前。先発予定だったディラン・ライリーが体調不良で出場を取りやめ、リザーブだったサミソニ・トゥアがCTB13に入り、バックアップメンバーだった山沢がリザーブに繰り上がっていた。
苦戦のイングランド戦…リザーブ陣が躍動
山沢がピッチに入ったのは後半15分。その時点でスコアは3-38と日本が劣勢だったが、流れを変えたのがリザーブ陣だ。3-45とリードを広げられたあとの63分、自陣22m線に攻め込まれたところで途中出場の初キャップSH藤原忍が相手ボールをジャッカルしてPKを奪い速攻に出ると、パスを受けた山沢がゲイン。そこから攻め返した日本は65分、途中出場の初キャップFL山本凱が相手タックルをかわしてゴール前まで突き進み、LOワーナー・ディアンズの飛ばしパスを受けたWTB根塚洸雅がこの試合初トライ。
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直後の69分にはハーフウェー付近からワーナーが大股ストライドで前進すると、猛然とサポートについたのが山沢だった。ワーナーからのパスを受けるとスピードをあげてイングランドDFを置き去りにし、そのままゴールポスト下にトライを決めるのだ。
試合後のミックスゾーン、リザーブ陣が流れを変えたね――記者たちのそんな問いかけに、山沢は首を振った。
「先発の選手たちがそれまでちゃんと日本代表のラグビーをしていたからこそ、途中から僕たちが入ったときにスペースが空いて、良いプレーをできたんです。自分じゃなく、リザーブの全員がチームに良い影響を与えることができたと思います」
あくまでも謙虚な言葉。決して自分を大きく見せようとしない。
そんな山沢のキャラクターを作ったひとつの要因が、12年前の夏の経験だ。