モーターサイクル・レース・ダイアリーズBACK NUMBER
マルケスの来季ドゥカティワークス入りに伴う“玉突き移籍”で改めて露呈したホンダ、ヤマハの求心力低下…中上、小椋は来季どうする?
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2024/06/22 11:02
6月3日のムジェロのテストでのルカ・マリーニとホンダRC213V。ホンダもさまざまな試みをしているが、いまだ答えが見つからない状態だ
そして最下位のホンダは、ワークスチームに今季加入したルカ・マリーニの契約がもう1年残っている。だが、今年で契約が切れる元チャンピオンのジョアン・ミルが果たしてホンダと契約更改するのかどうか、しなかったとしたらどこへ移籍するのかに注目が集まっている。現状、残っているライダーの顔ぶれを見ても、ミルのキープは復活を目指すホンダにとっては重要課題だ。実力ではヤマハのクアルタラロと並ぶライダーであり、ホンダは金銭面でも最大限の条件を提示して引き留め工作を行うのではないだろうか。
日本のファンにとって最大の関心事は、現在、出光のサポートを受けるIDEMITSU Honda LCRに誰が乗るのかだろう。7年目のシーズンを戦う中上貴晶は32歳。もっぱら今年が最後のシーズンと言われているが、第7戦イタリアGPを終えた時点で中上は「来季についてはオランダGP、ドイツGPの2連戦でホンダと話し合いたい」と語っている。低迷するホンダ勢の中で奮闘する中上をホンダ陣営がどう評価するのか。「年齢的にもいろいろと決断の時」とする中上の来季に注目が集まる。
その後継者には、MTヘルメット・MSIからMoto2クラスに出場する小椋藍とホンダチームアジアからMoto2クラスに参戦するソムキアット・チャントラの名前が挙がる。小椋は2年前にホンダにMotoGP参戦を打診されたとき、「いま決めろと言われたら、Moto2タイトル獲得を目指したい」と辞退。打診が7月だったこともあって断ったのだが、今年も同じ状況となっている。
ADVERTISEMENT
小椋が希望すればMotoGP昇格は確実だが、Moto2タイトル獲得に引き続き意欲を見せるだけに、これからの小椋の決断が注目される。小椋が辞退すれば「タイ人初のMotoGPクラス」の期待が膨らむチャントラの可能性が一段と大きくなるが、この出光枠のシートについてもオランダGP、ドイツGPの2連戦で大きく前進することが予想される。
ままならぬ復活への道筋
いずれにしても、MotoGPクラスの一連のシート争奪戦は参戦する5メーカーの実力、人気度をハッキリと示すことになった。これにおいて、日本メーカーの求心力が過去最低となっていることは間違いない。まずは日本メーカーのチームのシートが決まり、それからヨーロッパのメーカーのシートが決まっていた時代とは隔世の感があり、日本人としてはかなり寂しい感じがする。
思えば2年前のドイツGPでホンダは40年ぶりにノーポイントに終わり、それが大きなニュースとなった。昨年もノーポイントのレースが1回、今年は7戦を終えてすでに2回を数えるが、もう誰も話題にもしない。ホンダが最後尾争いをするイメージはすっかり定着し、それをライダーたち自ら「ホンダカップ」(せめてホンダ勢で最上位を目指す)と揶揄する状態となっている。
マシン開発の低迷が続いたことで絶対王者のマルケスがホンダを離れ、マルケスの去ったホンダからスポンサーも次々に消えていく状態。これに加えてライダー獲得もままならぬとなれば、ますます復活の道は遠ざかるばかりである。