モーターサイクル・レース・ダイアリーズBACK NUMBER
マルク・マルケス、来季のドゥカティ・ワークス入り確実! 急転直下の移籍報道の舞台裏…ドゥカティは最強体制へ
posted2024/06/05 11:00
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph by
Satoshi Endo
イタリアGPが終わった翌日の6月3日、雨の降るムジェロで今季2回目の公式テストが行われた。多くの選手がウエットの路面状況を見るためにコースインしたが、以後、ウエットでしっかりテストを続ける選手はそれほど多くなかった。多くのチーム、ライダーが準備したテストメニューはドライ想定だったからで、多くの関係者が何も成果を得られないまま、ただ時間が過ぎていくという1日となった。
そんな中、午後になってスペインとイタリアのメディアが報じた「マルク・マルケス 来季はドゥカティ・ワークス入り」というニュースは、瞬く間に世界を駆け巡った。そして、その直後にホルヘ・マルティンの来季のアプリリア入りが正式に発表され、茫洋とした1日が関係者もファンもびっくりの1日に様変わりした。
このふたつの出来事は密接に関係している。
前提として、2連覇を達成したドゥカティのエース、フランチェスコ・バニャイアの2026年までの契約更新がすでに確定。一方、バニャイアのチームメートのエネア・バスティアニーニは思ったような成績を残せず今季で契約終了で、もうひとりのライダーが誰になるのかに注目が集まっていたという状況があった。
その有力候補はふたり。ひとりはドゥカティのナンバー2チームであるプラマック・レーシングで2年連続してバニャイアとチャンピオン争いを繰り広げ、現在総合首位のホルヘ・マルティン。もうひとりは今年ホンダからドゥカティのサテライトチーム、グレッシーニ・レーシングに移籍し、チャンピオン争いに復活したマルク・マルケスである。
マルケス、ついに最新マシンを獲得
おそらく水面下では、それぞれのマネージャーとドゥカティとの交渉が続いていたのだろう。この数戦はどっちがドゥカティ・ワークスなのかという話題で持ちきりだったが、イタリアGPのウイーク中にいろんなことが一気に動き始め、週明けのマルケス・ドゥカティ入り確実報道とマルティンのアプリリア入りの発表につながったようだ。
マルケスの来季に向けての強い希望は最新型のワークスマシンに乗ることだった。ドゥカティ陣営でその恩恵を得られるのは、ドゥカティ・ワークスとプラマックに2台ずつ、そしてVR46に1台の計5台のみ。マルケスが所属するグレッシーニは来季も1年落ちのマシンで走らなければならない。ホンダのワークスチームで6度のタイトルを獲得しているマルケスはワークスチームの凄さを良く知っているし、レースの世界において1年という時間がマシンの進化に与える影響を良く知っているからだ。
しかしドゥカティ陣営の当初のプランは、これまで大きな貢献をしたマルティンをワークスチームに昇格させ、マルケスをプラマックに移籍させるものだったと言われる。だが、マルケスはプラマック入りを拒絶。グレッシーニでワークスマシンが手に入らなければドゥカティ陣営を離れる可能性もあり、急遽ドゥカティがマルケスのワークス入りを決めた、というのがここまでの流れである。