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MotoGPクラスが排気量850ccの新レギュレーション発表…速さを取り戻しつつあるヤマハはV型4気筒を選ぶのか?
posted2024/05/16 17:00
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph by
Satoshi Endo
ヤマハのエース、ファビオ・クアルタラロが、第5戦フランスGPで地元ファンを沸かせた。結果は転倒リタイアだったが、ホルヘ・マルティン、マルク・マルケス、フランチェスコ・バニャイアという表彰台に立ったドゥカティ勢3人と、このところ好調なアプリリアのマーベリック・ビニャーレスを追撃し、転倒リタイアするレース中盤まで6番手を走行した。
ル・マンで行われるフランスGPは、近年もっとも熱い大会だ。今年はフランスの連休も重なって開幕前日の木曜からサーキット周辺のキャンプ場は満員御礼となり、金曜日から日曜日までの3日間で史上最多の入場者数29万7471人を記録。連日、キャパシティいっぱいの10万人の大観衆が詰めかけた(自動車の24時間耐久レースは、MotoGPが行われるブガッテイ・サーキットと公道部分を組み合わせたサルト・サーキットが使われる)。
もちろん、ヤマハのエースで2021年にフランス人として初めてMotoGPクラスのチャンピオンになったクアルタラロの人気は絶大である。開幕と同時にサーキットで売り出されたクアルタラロのTシャツ、帽子などのグッズはすべて完売。常に熱い走りを見せるクアルタラロが地元ファンの熱狂的な声援を受け、いつにもましてアドレナリン全開の走りになるのは当然のこと。その走りが観客を一段とヒートアップさせ、クアルタラロと一緒にファンの声援がコースを一周していた。
ゴールまで残り11周、レース後半に入ったばかりの17周目にクアルタラロが転倒した瞬間、サーキットは静まり返ったが、グラベルで起き上がった姿がビッグスクリーンに映し出されると、10万人の拍手がサーキットに響きわたった。
今シーズン初めての手応え
「今日は1周目から限界で走った。もっと早く転倒していてもおかしくない走りだったが、このところ苦戦が続いているし、ホームGPだったから全力だった。でも、転倒した後にこんなにハッピーな気分になれるとは思わなかった。今シーズン初めてYZR‐M1のポテンシャルの高さを感じたからね。結果的に転倒したけれど、モチベーションはすごくあがった。転んだというのにみんな僕の名前を呼んでくれた。すごく感動した」
例年のことだが、ル・マンに押し寄せるファンの多くはキャンプ場に泊まり込んで夜通し大騒ぎする。午前中の走行時間は、起きたばかりなのかまだ寝ているのか、1日の中でもっとも穏やかな時間帯となる。それが午後になると大いに盛り上がり、夕方から夜にかけて行われるパドック内のイベントには大勢のファンが押しかけて、大変な騒ぎになる。